カレー店「中栄」の店主、円地政広さん=19日午前、東京都中央区、長島一浩撮影
豊洲市場(東京都江東区)への移転か、築地市場(同中央区)の再整備か。小池百合子都知事が移転を延期し、宙に浮いたままの築地市場問題は、市場で働く人たちを揺さぶり続けてきた。都議選(6月23日告示、7月2日投開票)で争点化する動きもあるなか、関係業者たちは厳しい表情で知事の判断を待つ。
特集:小池都政
空腹を刺激するスパイシーな香り。19日午前8時、物販店や飲食店計約140店が並ぶ築地市場内「魚がし横丁」のカレー店「中栄」は、買い出し人らでにぎわっていた。
1912(大正元)年の創業。築地市場が開場した35年に日本橋から移り、市場とともに歩んできた。カウンター内から手際よく皿を出すのは4代目社長の円地(えんち)政広さん(54)。卸や仲卸の業者らと同様、市場内の店も、移転計画の影響をもろに受ける当事者だ。
円地さんは元々、土壌汚染への不安から豊洲移転に反対だった。だが都は2010年に移転を決定。「安全が保証されるなら」と腹を決め、豊洲の新店舗に1300万円を投資した。地元の常連のため、豊洲移転後もにぎわいを残そうと中央区が設けた商業施設「築地魚河岸」への出店も決めた。
ところが昨年8月、小池知事は豊洲市場の土壌の安全性確認が不十分などとして、11月の予定だった移転の延期を表明。まもなく豊洲市場で汚染対策の盛り土がされていない事実も発覚した。「もう都が言う『安全』は信用できない」と円地さん。築地魚河岸への出店は違約金を払って中止した。
今は築地での再整備に希望を託…