「てんでんこボタン」のイメージ模型(疋田智さん提供)
津波がきた時、電動アシスト自転車の補助制限を一時解除する緊急スイッチがあれば、避難に役立つのでは――。自転車愛好家のアイデアから、具体化を模索する動きが広がっている。名付けて「てんでんこボタン」。現行の道路交通法では認められず、実現にはハードルもあるが、賛同者は「議論が、災害時の避難方法を改めて考える機会になれば」と話す。
提案したのは、TBSプロデューサーで自転車通勤する「自転車ツーキニスト」疋田智さん(50)。きっかけは東日本大震災。自動車で避難しようとした多くの人が犠牲になった。震災後の国の調査では、地域住民の57%が自動車で避難していた。「車でなければ間に合わない」「家族と避難したかった」などの理由が多かった。しかし、渋滞で自動車を放置すれば道路をふさぎ、カギを残しても運転者がいなければ動かせない。
自転車で逃げていれば渋滞や立ち往生はないが、高台へ避難するには時間と体力が必要だ。そこで電動アシスト自転車の活用を考えた。緊急スイッチは、「それぞれに」を意味する東北方言で、津波避難の教訓である「てんでんこ」から名付けた。
現在、電動アシスト自転車は、道交法で速度に応じてアシスト(補助)率が制限されている。体力のない人や子どもを乗せて高台に行くため、緊急時に限ってアシスト率の制限を解除すれば、こいだ力の3倍のパワーで坂道を上れる。南海トラフ地震などが予測される中、疋田さんも会員であるNPO法人「自転車活用推進研究会」の小林成基・理事長は「喫緊の問題として検討に値する」という。
法律以外にも課題はある。誤作…