新澤醸造店の精米歩合7%の純米大吟醸。アーティストがデザインした最高級シリーズ=宮城県
高級な日本酒の醸造で近年、極限まで削り込んだ米が用いられるようになり、注目を集めている。どうしてそんなに削るのか。
世界一の出品数を誇る市販の日本酒のきき酒イベント「サケ コンペティション」。昨年新設されたスーパープレミアム部門で1位に輝いたのは「来福 超精米 純米大吟醸」。原料の米を表層から削って残った部分の割合を示す「精米歩合」は8%。9割以上を削り落とした酒米で醸した。
つくった来福酒造(茨城県)の藤村俊文社長(45)の挑戦は10年余り前にさかのぼる。硬さが特徴の茨城産米が登場し、形が崩れにくい特徴を利用して「限界までやってみよう」。20%台から年々削りを増やした。精米機に繰り返しかけ、すり抜けないよう網の目を細かくした。1桁台を実現した2009年に商品化し、縁起がいい末広がりの8%まで進めた。
「もったいない」「ばかなことを」とネット上で炎上したこともあるが、藤村社長は「話題になり、認知度が上がった」。4合瓶(720ミリリットル)で1万2千円。売れ行きは好調だという。
来福に続いて精米歩合9%の純米吟醸「残響」を売り出した新澤醸造店(宮城県)は、海外にも目を向ける。「日本酒の評価は様々あるが、『1桁』というインパクトはわかりやすい」と新澤巖夫(いわお)社長(42)。米ラスベガスにある高級ホテルのレストランでは4合瓶が2500ドル、日本円で20万円台後半で提供されているという。過当競争を避けるため、来福酒造とは「紳士協定」を結ぶ。その後、7%を出す蔵があり、15年に7%の残響を出したところで止めているという。国内の販売価格は4合瓶で3万円強。ボトルのデザインに凝ったさらに高級なシリーズも出す。「未知の領域の味、という挑戦です」