小学3、4年生の頃だったか。母にしばしば、古本市に連れて行かれた。お目当ては、百科事典。働き者で倹約家、本などめったに読まないのに、品定めする横顔はなんだかうれしそうで、子ども心に意外な感じを受けた。
でも今なら、ちょっとわかる。早く社会に出たから知らないことがたくさんある、とこぼしていた母のこと、憧れの「知」を身近に引き寄せ、なりたかった自分になれそうな気がしていたのだろう。
そんな何十年も前のことを思い出したのは、山口県周南市が、来年新設する図書館、いわゆる「ツタヤ図書館」に置く「インテリア」として、中が空洞の「ダミー本」3万5千冊を約152万円で購入することを計画していると知ったからだ。
市議会の議事録によると、2階まで突き抜ける高架の棚を設け、「本に囲まれた空間を演出する」ため「手が届かない場所へは洋書やダミー本を置く」らしい。図書館全体の本棚の容量は10万冊分というから、3分の1をダミー本が占める計算になる。
担当者は昨秋、こう答弁していた。「入った時に『うおっ』と思って頂ける空間づくりをしたい。ただしあまりにもダミー本ばかりだとおかしな話になるので、縦ではなくちょっと横に置いてみるとか、極力減らしていく方向で協議を進めている」
はい。私も見たらたぶん「うお…