憲法第1章の「天皇」をテーマに討議された衆院憲法審査会=8日午前9時14分、岩下毅撮影
衆院憲法審査会は8日、憲法第1章が定める「天皇」をテーマに各党が自由討議を行い、自民党は天皇を元首に位置付けることに肯定的な意見を示した。民進党など各党からは、国民主権の原則に反するとして、元首に否定的な主張が相次いだ。
憲法1条で、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と規定している。自民を代表して意見を表明した根本匠氏は、天皇が「外交関係において国を代表する職責を有している」との点を重視し、「天皇を憲法上、元首と位置づけることはあり得るのではないか」と述べた。2012年の党改憲草案では、1条で天皇を「日本国の元首」と明記している。
一方、民進の岸本周平氏は「行政権を保持していない天皇をあえて元首と規定することは誤解を招く恐れがある」と指摘した。
共産党の赤嶺政賢氏と社民党の照屋寛徳氏は、自民の改憲草案を取り上げた。赤嶺氏は、天皇を元首とすることに対し「国民主権の原則と相いれないことは明白だ」、照屋氏は「天皇の神格化と天皇を中心とした国づくりを目指すものだ」として、それぞれ反対する意見を述べた。
日本維新の会の足立康史氏は、第1章の改正は必要ないとの立場を示した。
また、9日に成立見込みとなっている天皇陛下の退位を実現する特例法案に関連して、民進党の委員から女性宮家の創設や女性・女系天皇の検討を求める意見が相次いだ。自民の船田元氏は「女性宮家は大変な有効な手段」と前向きな姿勢を示したが、同じ自民の鬼木誠氏は「天皇の定義さえも変わってしまいかねない」と反対した。(藤原慎一)