試合後、チームメートと抱き合う至学館の林和輝君(右)=愛知県小牧市の小牧市民球場
第99回全国高校野球選手権の地方大会は17日開幕した沖縄大会を皮切りに、7月には全国各地で本格化する。各大会でベンチ入り出来るのは20人。最後の夏を前に、背番号が与えられない3年生のための「引退試合」が各地で開かれている。
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14日に愛知県の小牧市民球場であった至学館と栄徳の引退試合。12―3で迎えた最終回、至学館の林和輝君(3年)がマウンドに立った。
「林、ええボールが走っとるぞ」「気持ちで絶対負けるなよ」
ベンチやスタンドからは、一球ごとに大きな声援が飛ぶ。最後の打者を左飛に打ち取って至学館の勝利で試合終了。林君は満面の笑みを浮かべ、次々にチームメートと抱き合った。
幼稚園から野球を始め、中学ではエースとして活躍した林君だが、高校では背番号を勝ち取ることは出来なかった。打撃投手として一日数百球を投げたり、スタンドから応援をしたり、主に裏方として3年間を過ごしてきた。
最後の「晴れ舞台」は得意の直球で勝負すると決めていた。3安打を浴び2失点を喫したが、ひるむことなく直球主体で31球を投げ抜き、「自分らしい投球が出来た。本当に楽しかった」。
この日、母・由里子さん(46)と妹・那奈夏さん(7)がスタンドにかけつけた。試合に出場する和輝君を見るのは初めてだったという那奈夏さんは「すごくかっこ良かった」と、兄の雄姿をたたえた。
試合後、「一区切りついた。3年間支えてくれた家族やチームメートに感謝です」と口にした和輝君。「夏の大会までに出来ることを一生懸命やって、甲子園出場を支えたい」
引退試合は、中京大中京(名古屋市)の大藤敏行監督(当時)が「試合に出られない選手にも光を当てたい」と、大府の指導者とともに2000年に始め、注目された。部員の多い強豪校を中心に、東京都、鳥取、福岡各県など全国に広がり、現在は「夏の風物詩」として定着した。(井上昇)