ヤクルトの井野卓
(16日、ヤクルト8―5日本ハム)
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それは実に6年ぶり、在籍3年目のヤクルトでは初めてのヒットだった。
八回、先頭打者の井野の打球が一、二塁間を破った。プロ12年目の井野にとって通算11本目の安打が呼び水となり、チームは2点差をひっくり返して逆転勝ち。「ヒットはたまたまですけど、こういう時のために準備してきたので」と、33歳は控えめだ。
13日に正捕手の中村が右ひざを痛め、離脱。2軍から井野が昇格したが、あくまで控え捕手の立場だった。ところが、2番手捕手の西田がこの試合の二回の打席で左足に自打球を当て、プレー続行が不可能に。チームにとっては危機だが、井野に出番があるとすれば「こういう時」だけだ。
前橋工高から東北福祉大を経て、最初に入団したのは楽天。在籍7年で出場は43試合だけだった。1年後に入団した嶋がレギュラーになり、ほとんどチャンスはなかった。トレードで巨人に移籍するも、2年で戦力外通告を受けた。ヤクルトに拾われたが、すでに若い中村が地位を築いていた。過去2年で出場は2試合。ヒットはなかった。
試合途中で捕手が交代し、先発で新人の星がリズムを乱しかねない状況だったが、野村バッテリーコーチは「投手への気づかいができる男なので、冷静にリードできていた」と評価した。それでも井野は「チームとしては、自分よりもレギュラーの捕手が出た方がいい。けがから戻ってくるまで、何とか間をつなぎたい」と、最後まで控えめだった。(伊藤雅哉)