韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が先週、新たな対北朝鮮政策を発表した際、日米と事前協議をしなかったと、日米韓関係筋が明らかにした。文政権は、米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)配備でも米国の意向に反する動きを見せるなど混乱。来週、康京和(カンギョンファ)外相を米国に派遣し、月末の米韓首脳会談に向けた調整を急ぐが、日米韓の対北朝鮮政策に齟齬(そご)が目立っている。
文大統領は15日、2000年の南北首脳会談を記念した演説で、対北朝鮮政策について「北が核とミサイルの追加挑発を中断すれば、無条件で対話に臨む」と述べた。文正仁(ムンジョンイン)・大統領統一外交安保特別補佐官もワシントンを訪れた16日、北朝鮮の核・ミサイル開発中断を条件に、米韓合同演習や米軍の戦略兵器派遣を縮小する可能性に触れた。
日米韓は北朝鮮が非核化につながる具体的な動きを示さない限り、対話に応じない姿勢をとってきた。関係筋によれば、新たな政策について、文政権から日米に事前の説明はなく、両政府が韓国に真意を問い合わせたという。
これに対し、韓国大統領府は「文正仁氏の発言は個人的なもので、韓米同盟の利益にならない」として、同氏に注意したが、文大統領の発言の背景や意図についての説明はないという。
一方、文政権は6基の砲台のうち2基だけが先行して稼働しているTHAADについて、配備先の環境影響調査を行う方針。1~2年かかる調査が終わるまで、6基すべての稼働を認めない可能性が出てきた。
米国は一刻も早い完全稼働を求めているが、文政権は19日現在、調査について詳細を米側に説明していない。関係筋の一人によると、トランプ米大統領は8日、ホワイトハウスでティラーソン国務長官らから文政権のTHAADに関する方針の説明を受けた席で激怒。THAADが韓国防衛の意味も持つため、韓国を「恩知らずだ」と名指しで非難したという。
文政権内では、米韓首脳会談でトランプ氏から批判や別の要求が出ることを懸念する声が出始めた。外相人事では、世論を意識して「ソウル大出身で高級外務官僚経験者」という従来の慣行を破って康氏を起用したが、野党が反対。18日に任命を強行して批判が沸騰し、文政権の政策が逆風を受ける一因になりそうだ。文正仁氏の辞任を求める声も出ている。(ソウル=牧野愛博)