明暗が分かれたシャープと東芝の株価
経営再建中のシャープが月内にも、東京証券取引所2部から1部へ復帰申請する。業績好転を理由に、戴正呉(たいせいご)社長が20日の株主総会で明らかにした。一方、原発事業の巨額損失に揺れる東芝は、8月にも1部から2部に降格する見通しだ。両社の株価は明暗がわかれる値動きになっている。
シャープの戴社長は総会で「2年程度で黒字にすると言ったが、3カ月で黒字にした」と強調し、29日か30日に東証1部への復帰を申請する方針を示した。これを受け、シャープ株は前日の終値より30円高い420円で取引を終え、最安値をつけた昨年8月の89円(終値ベース)から5倍近く上昇した。
シャープは経営不振の影響で、2016年3月末時点で借金などの負債が資産を上回る「債務超過」に陥った。東証の規定で、昨年8月に1部から2部に降格。その後、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業からの出資を受けて債務超過を解消し、17年3月期はコスト削減の効果などで3年ぶりの営業黒字を確保した。東証関係者は「1部昇格のハードルは多くない」としており、審査が順調に進めば、今秋にも1部復帰が視野に入る。
一方、東芝の20日の株価は330円ほど。昨年12月の巨額損失発覚前の7割程度の水準だ。17年3月期は債務超過となる見通しで、規定に従って8月にも2部へ降格する見通しだ。
東芝の株主は約40万人とされ、これまでは「優良銘柄」として年金や退職金などを安全に運用したい人が投資対象にしていた。だが、こうした株主が経営への不信感などから「東芝離れ」を起こしており、現在は空売りなど投機的な投資の対象となっている。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「製造業は国際的な競争が激しく、大企業であっても、選択と集中をしないと生き残れない」と指摘している。(岩沢志気、大隈悠)