社会のモデル転換と技術の進歩は、現代の若者たちの職業選択意識の変化を促している。彼らは足下を固め、「自立したい」と考えると同時に、自分の好きなことや夢を追い求める人たちでもあり、その中から二足のわらじを履く生活を享受する「スラッシャー(複数の肩書を持つ人)」が生まれた。
オフィスビルで働くホワイトカラー、スポーツジムのコーチ、ラジオのパーソナリティ、フリーライターなど、一見、何の関わりもないような肩書きを、現代の若者は自由に組み合わせ、いくつもの役割をこなす。複数の職業や立場をもつ人は、「スラッシャー」と呼ばれる。
小輝さんは昼間は出版社の編集者で、仕事が終わるとラジオのパーソナリティになる。小輝さんは自分の二重の肩書について、「仕事と趣味の妥協した選択だ」という。
中国の国学を学んだ小輝さんにとって、出版社での仕事は自分の専攻にマッチするもので、業界の発展状況を把握し、人脈を広げる貴重な機会でもある。ラジオの仕事はパーソナリティという自分の夢を叶え、副収入ももたらしてくれるものだ。
「中国青年報」社会調査センターが18-35歳の若者1988人を対象に行った調査によると、回答者の52.3%が「身近にスラッシャーがいる」と答えた。報告書「2019年兼業若者金融ニーズ調査研究」では、全国の若者のうち本業をもつダブルワーカーと起業家はすでに8千万人を超える。
スラッシャーな生活はどうして若者に人気があるのか。北京大学の靳戈研究員は、「スラッシャーになる原因はさまざまだ。スラッシャーな生活を選んだ一部の若者は、本業での安定した収入は捨てがたいが、興味や趣味を引き続き掘り下げたい強い願望もあるためスラッシャーを選んだ。また一部のスラッシャーが多面的な生活を選んだのは、自分の興味や趣味を多元的に発展させ、本業とは違う仕事で経験を積み、成長を遂げたいと強く願ったからだ」と見ている。
90後(1990年代生まれ)の莉莉さんは一線都市で健康コンサルタントとダンスの先生をしている。2つの仕事が衝突することはないという。
「ダンスの先生はレッスン時間が流動的で、細切れの空き時間がたくさんある。健康状態をキープするのはすべてのダンサーにとって必須の課題であり、ましてや健康コンサルタントの仕事はオンラインでできる」と話す莉莉さんは、ダンスと健康の二足のわらじを履く生活がごく自然に始まったという。
スラッシャーな生活は複数の職業体験として、多くの若者により大きな挑戦の機会と新鮮な感覚をもたらし、より多くの収入と発展チャンスももたらした。現在、莉莉さんは自分の多様な仕事のスタイルを継続するつもりで、今後の働き方の転換に向けた基礎固めをしているところだ。
中国社会科学院大学经济学院の黄敬宝教授は、「莉莉さんのようなスラッシャーの登場は、主に技術によって時間と空間の制約がなくなったことが背景にある。いくつもの仕事をこなすには、さまざまなパターンの労働時間を調整する必要があるが、新しい技術の応用がテレワークをサポートした。インターネットの時代に、仕事の時間的・空間的制約がなくなれば、多くの若者が余暇時間に2つ目の仕事、あるいは3つ目の仕事をこなせるようになる」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年2月2日