日本産科婦人科学会(日産婦)は24日、理事会を開き、体外受精させた受精卵の全ての染色体を調べ、異常がないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング(PGS)」を学会指針に反して実施したとして、神戸市の大谷レディスクリニック院長の大谷徹郎医師を、会員資格停止(3年間)の懲戒処分にした。
日産婦の指針は、受精卵検査は重い遺伝性の病気などに限定しており、PGSについては「命の選別につながる」との懸念から認めていない。
だが、同クリニックは2011年以降、PGSを実施しているという。日産婦は昨年3月、大谷医師を譴責(けんせき)処分にした。その後、大谷医師側から始末書が提出されなかったため、更に重い資格停止処分にした。
日産婦は今年2月、PGSが流産率を下げる効果があるか検証するため、一部の施設で100組の夫婦を対象に臨床研究として実施すると発表。大谷レディスクリニックは含まれていなかった。
日産婦の苛原(いらはら)稔・倫理委員長は「(PGSが)出産率に寄与するか否か、まだ結論が出ておらず、学会の見解を守って欲しいと伝えてきたが守られなかった」と述べた。一方、大谷医師は処分に対し、「妊娠しやすくて流産しにくい治療を受けることは患者様の基本的人権です。日産婦の処分とは関係なく、治療を続ける」とする声明を出した。
また、母親の血液で胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断を、指針に反して実施していた奥野病院(大阪市)について、日産婦は昨年12月に譴責処分にし、さらに重い処分も検討していたが、奥野幸彦院長から学会の退会届が提出されたとして受理された。