ロート製薬の「キオグッド顆粒」
「最近、人の名前が出てこない……」。そんな中高年のもの忘れ改善をうたう市販の医薬品の発売が続いている。漢方薬に使われる生薬のエキスが主成分で、厚生労働省がガイドラインを示したことを受けて各社が発売した。ただ、薬が効能をPRする「加齢による中年期以降の物忘れ」と認知症は異なり、厚労省は販売時に注意喚起するようメーカーに求めている。
市販の漢方薬でシェア1位のクラシエ薬品は、「アレデル顆粒(かりゅう)」(税抜き1900円)を売り出した。思い出せなかった「アレが出てくる」という意味で商品名を付けた。商品の外箱には「物忘れを改善する」と表記してアピールする。
小林製薬は、錠剤タイプの「ワスノン」(同3700円)を発売。同社によると、含まれる成分が「脳内の情報伝達を活性化する」という。ロート製薬も「キオグッド顆粒」(同1800円)を売り出した。売れ行きは好調という。
各社の薬の主成分は「オンジエキス」。オンジとは、植物のイトヒメハギの根の部分を使った生薬で、東洋医学で「健忘」に効く薬として使われてきた。
複数の生薬を組み合わせた漢方薬は普及しているが、1種類の生薬をエキスに濃縮した医薬品は国の審査基準の整備が遅れていた。2015年、厚労省が一般用医薬品向けの生薬の製造方法や効能などのガイドラインをつくった。オンジはその一つで、各社が「もの忘れ改善薬」を商品化した。
もの忘れでも、日常生活に支障が出るなど、認知症が疑われる場合は、早期に医療機関を受診する必要がある。クラシエ薬品は商品紹介のホームページに「物忘れの内容によって、病気(認知症)の前兆を疑うことも重要」と記載している。厚労省はメーカーに対し「適切な医療を受ける機会が失われないよう、注意喚起を含めた配慮を求めている」としている。(村井七緒子)