ノックを受ける木下陽仁君=滋賀県守山市
熱戦が続く滋賀大会に、創部2年目の立命館守山が挑んでいる。2年の春から入部した3年生は、通常より1年短い野球部生活。1年のときは女子ソフトボール部に入って創部を待った。初戦は12日午後。実力者ぞろいの下級生とともに、大会初勝利を目指して湖南農と対戦する。
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3年の木下陽仁君は、夏の大会では初めて1桁の背番号「6」をつけて臨む。
京都市出身。中学時代は地元の軟式チームで二塁手。中3の最後の大会では出場機会がなかった。「野球は向いていないかも」と思い、当時野球部のなかった立命館守山へ進学した。
野球部は1年後にできると聞いたが、入部する気はなかった。だが、同じクラスになった外野手の山田幸輝君(3年)に「俺は入るつもり。一緒にどう」と誘われ、2人を含む4人で1年後の入部を約束した。
とは言え、1年後まで何もしないわけにいかない。まず4人で女子ソフトボール部に入部させてもらった。ノックの手伝いなどをした後、4人で残ってグラウンドを走り、約200球のティー打撃などを繰り返した。「女子の部員とは仲が良かったけど、大会に同行した時に『何でおるん』みたいな他校の女子の目が嫌だった」と笑う。
1年後に誕生した野球部には、京都や大阪からも有力選手が入ってきた。箭内健部長は、「2年やってもベンチに入れないかもしれない」と厳しく対応したが、4人は「やりたい」と入部した。
部は1学年下が中心になり、主将も後輩が務めた。4人とも試合に出場できず、木下君は「悔しかったし、恥ずかしかった」。
ベンチから見守り、初戦で敗退した昨夏の大会後は、「あと1年で野球ができなくなる。もっと頑張らないと」と必死だった。守備では打球に対応する1歩目と送球への握り替えを速くすることを意識し、打撃ではフォームを改造。50メートル6・1秒の足を武器に頭角を現していった。
昨秋、遊撃手の定位置を獲得。県大会で8強入りに貢献した。入部当初、「この技術じゃ無理」とみていた秋武祥仁監督は「短い期間の中でよくここまで伸びた」と成長ぶりに驚く。
木下君は「あと1年あればもっと野球がうまくなれたのにと思うと、もう少しやりたい気持ちがある」。それでも、最後の夏。「いつもの練習通りにプレーして勝利を重ね、少しでも長く野球がしたい」と話した。(北川サイラ)