契約更改時の事前通知制度導入を求めて記者会見する嶋会長(右)。左は大島(中日)
プロ野球で、オフの契約更改のやり方を巡り、選手会と球団との「労使紛争」が表面化した。契約更改交渉の席で提示する年俸額を、事前に選手側へ通知するかしないか、というもの。選手会は「選手にも考える時間が必要」とし、事前に書面通知する制度導入を要求。しかし、12球団側はこれを拒否している。選手会は要求が聞き入れられない場合、今オフの契約更改時に、全員が最初の交渉で契約を保留するなど対抗措置を取ることを決めた。
14日、労組プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)は名古屋市内で臨時大会を開き、契約更改における制度導入の要求を決議した。選手会によると、全選手にアンケートした結果、とくに若い選手の契約更改で年俸提示額に有無を言わせずサインを求められるケースが多いという。また、取り決めに反して、消費税込みの年俸額を提示している球団が6球団あると指摘。いずれも選手の不利益になることから、今年1月の事務折衝から是正を求めてきた。
Jリーグでも同様の契約更新通知制度があることなどから、嶋会長は「年俸を上げて欲しいのではなく、選手が納得のいく交渉で来季につなげるのが一番の目的」と語った。8月下旬にある次回の事務折衝で進展がない場合、全選手へのアンケート結果も公表するという。さらに、今後は12球団のオーナーにも現状確認の手紙を送付するという。
一方、12球団側は「事前の書面通知は数字が独り歩きしてしまう」と導入を拒否。日本野球機構(NPB)の選手関係委員長を務める谷本修・阪神球団常務は「事前通知の金額が他球団の選手との情報交換に使われると、球団の経営状況が外部に漏れる可能性もある。各球団で違う」などと理由を挙げた。さらに「更改では数字ではなく内容が重要」として、「真摯(しんし)に事務折衝で話し合っている最中なのに、選手会が一方的に発信するのは残念」と語った。