トンボの柄と刃板を金具でとめ合わせる掛水友福さん=大津市若葉台
14日の滋賀大会で初戦を迎える大津のために、グラウンド整備に使うトンボを作り続けている大工さんがいる。大津市若葉台の掛水友福さん(65)。長男が野球部員だったころから始めて18年。「選手ががんばっている姿を見ていたら、少しでも力になれればと思って」と勝利の吉報を待つ。
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掛水さんがトンボを作り始めたのは長男宣高さん(33)が小学3年生の時。所属する地元の少年野球チームで、多くの子が整備に関われるようにと思った。その後も息子2人が通ったチームと中学、高校の野球部にトンボを贈り続けた。
宣高さんが主将を務めた大津向けには、作り続けて18年になる。宣高さんの卒業後も、仕事場に向かう時や帰りに、グラウンドで練習する選手を見て、「何かしてあげたいと思った」。
トンボは、ベイツガ製。幅約60センチの刃板の底面の摩擦を少なくするため、傾斜をつけて先端の厚さは5ミリに。長さ約2メートルの柄の部分は、持ちやすいようカンナをかけて丸みを持たせる。毎年新調するほか、柄を再利用して刃板をつくり直すものもある。
通常は1本数千円前後する。毎年20本前後を無料で提供していたが、「長い間よくしてもらって申し訳ない。材料費だけでも」(沢田慶次監督)と数年前から1本1千円(刃板の取り換え500円)で部が買っている。選手からは「軽いから楽に平らにできる」「持ちやすい」などと好評だ。
掛水さんは、宣高さんの最後の夏の大会の初戦で、球場に妻と一緒に応援にかけつけ、チームが勝利した瞬間を今も忘れられないという。「応援してきた私たちには最高にうれしかった」と振り返り、現役の部員たちにも「(勝って)校歌を歌ってほしい」と期待する。
神田航志主将は「思いに応えられるよう、結果で恩返ししたい。一戦一戦集中して、力を発揮したい」と意気込んでいる。(北川サイラ)