「パティスリー・トロンコーニ」には地元のフルーツなどを使ったケーキが並ぶ=三島市本町
東京で人気だったケーキや洋菓子の店「パティスリー・トロンコーニ」が6月末、静岡県三島市本町にオープンした。JR駒込駅近くで22年にわたって愛された店を閉め、地産地消のフルーツなどで菓子に季節感を持たせることができる三島で再出発することにした。
旧東海道沿いに立地する店に行くと、店内を次から次へと客が訪れる。「もうあのケーキはなくなっちゃったの?」と、残り少なくなったショーケースを見て残念そうに帰る客も。
日本文学者のドナルド・キーンさん(95)もお気に入りの店で、都内にあった時には本人がよく訪れていたという。当時を知る店員は「プリンやモンブランをよく買われていました」と教えてくれた。
著名な男性が、お気に入りのスイーツを紹介する朝日新聞夕刊の「オトコの別腹」。2013年12月3日付の同欄にはキーンさんが登場し、同店の「なめらかプリン」を紹介した。ただ残念なことに三島ではプリンの販売はしていない。
キーンさんは「世界一のプリン」と絶賛。「私が教えていたコロンビア大学があるニューヨークや欧州でも、これよりおいしい店を知りません。パティシエは想像力がある方なのでしょう」と賛辞を送っていた。
そのパティシエで、オーナーシェフの岸上清貴さん(63)は徳島県出身。三島を訪れたとき、自然が豊かで食べ物がおいしいことが気に入って店の移転をすぐに決意したという。
オープンは6月24日。店の広さは約56平方メートルと、都内のときの約116平方メートルの半分ほど。従来やっていたイートインスペースもない。それでも三島で店を始めたのは「お菓子に季節感を持たせるというのが一番だった」。東京では何でもそろいすぎ、なかなかできなかったことだという。
県東部には伊豆の国市のイチゴ、函南町のスイカ、三島市では宮崎マンゴーに匹敵する糖度があるマンゴーを作る生産者もいる。ケーキなどには地産のフルーツを使う。「ずっとこれから地産地消にこだわっていく」と語る。
大学卒業後、ホテルなどを経て…