映画「この世界の片隅に」で描かれた「大正屋呉服店」(中央)とその周辺=(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
世界遺産・原爆ドーム(広島市中区)の南約170メートルにある被爆建物「平和記念公園レストハウス」。国内外の観光客らが使う休憩所だが、これを建設時の「呉服店」の姿に近づける計画を、広島市が進めている。被爆前の周辺写真のパネルなどを展示するスペースも設け、当時のにぎわいや原爆の惨禍を知ってもらう施設にする狙いがある。
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レストハウスは1929年、広島屈指の繁華街だった旧中島本町に「大正屋呉服店」として建てられた。当時は珍しい鉄筋コンクリート造りで地上3階地下1階。アニメ映画「この世界の片隅に」にも登場する。
43年末、繊維統制令で店は閉鎖。国策の統制組織である広島県燃料配給統制組合に「燃料会館」として使われていた45年8月6日、約170メートル北東の上空で原爆が炸裂(さくれつ)した。出勤していた37人は地下室にいた男性1人を除き、全員死亡。屋根や一部の壁が大破し、火災にも見舞われたが、建物としての原形はとどめた。
市の計画では、外観や内装を呉服店当時に近づける。大きな窓が配置された外観や売り場の内装は、施工した清水組(現・清水建設)が当時の写真を保存していた。これらをもとに設計を考えるが、写真はモノクロで他の資料も乏しいため、「この世界の片隅に」の片渕須直監督の元へ、意見を聞きに出向いた。
生存者がいた地下室は、被爆時の様子を保存しつつ、より見学しやすいよう動線を工夫。新たにエレベーターも導入する。
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