亡くなった坂本行俊さんら家族3人の自宅跡では、近所の住民らが花を供えて黙禱(もくとう)した=5日、福岡県朝倉市杷木林田、稲垣千駿撮影
朝から厳しい暑さとなった5日の九州北部。豪雨被害から1カ月を迎えた福岡と大分の被災地では、いまだあちこちに爪痕が残る。住民やボランティアらは犠牲者を悼みつつ、近づく台風5号への備えを急いでいた。
赤谷川が氾濫(はんらん)し、集落一帯が土砂に埋まった福岡県朝倉市杷木林田の東林田地区では、5日も住民らが朝から復旧作業にあたった。流木の撤去が進む一方で、土砂はまだ残る。台風に備え、赤谷川では土囊(どのう)を住宅の周りに積むなどの対策が急ピッチで進められた。
豪雨のあと、大分県日田市の会社の寮に避難している土木作業員の時川重金さん(62)は、東林田地区の自宅の外に置いてある机などが台風で飛ばされないようシートを張ろうとしていた。
1カ月前の豪雨で、自宅の床下には土砂が入り込んだ。ボランティアの力も借りて土砂をかき出し、家具などを持ち出して掃除を進めてきた。「大雨が降ったらまた被害が出る。台風は9月いっぱいはくる」と不安そうに語った。
台風の接近にあきらめたような表情を浮かべていたのは、農業の久保山哲男さん(76)。豪雨で自宅には流木や土砂が流れ込み、壁が壊れて家の中がむき出しになったまま。「毎日来ても、自分じゃ手がつけられん。だが、来るだけ来ている」。家は先祖代々が住んできた。「また水害が起きるかもしれない。そんなことにならないように対策をとってもらわないと、ここには住めない」