九寨溝から成都方面に避難するため、用意されたバスに乗り込む観光客ら=10日、中国四川省、益満雄一郎撮影
マグニチュード(M)7・0の強い地震に襲われた中国の四川省アバ・チベット族チャン族自治州九寨溝(きゅうさいこう)県に、朝日新聞記者が入った。夏の観光シーズン真っ盛りを直撃され、観光客ら約7万人が避難した。地元住民らは今後への不安を深めている。
同州政府によると、8日の地震発生から10日昼までに、観光客6人を含む20人が死亡、けが人は431人に増えた。
被災地一帯は標高が3千メートルを超える場所も少なくない。夜間は肌寒さを感じさせる中、徹夜態勢で行方不明者の捜索が続いている。
観光スポットだった池が決壊するなどの被害が出た九寨溝風景区は、入り口につながる道路を警察が封鎖。メディアなどの立ち入りを制限しているが、医療関係者や救助関係者らを乗せた車両がひっきりなしに行き来している。
九寨溝の空港近くにある旅行情報センター前では10日早朝から、足止めされていた観光客らが地元政府の手配した大型バスに次々と乗り込み、四川省の省都、成都などに向かった。
地域を支えてきた観光再開のメドは立っていない。
ホテル従業員の女性(19)は「いつまで休業が続くのか」と不安な表情。客待ちをしていたタクシー運転手の文春元さん(48)は「かき入れ時だけに、収入が減るのは痛い」と漏らした。
空港は救援物資を運ぶ軍用機などが優先使用するため、民間機はこの日も遅延やキャンセルが相次いだ。南京から観光で来たという男性(41)は息子(12)が風邪をひいてしまい、「何とか搭乗したい」と話していたが、キャンセルが決まり、ため息をついた。
余震も同日夕までに約1900回に達した。(九寨溝=益満雄一郎)