試合後、号泣するチームメートに声をかける東海大菅生の小玉佳吾君(左)=22日、阪神甲子園球場、細川卓撮影
東海大菅生(西東京)はこの春、主将が一度代わった。チームを引っ張ろうとして厳しさばかりを求めた主将、なかなかついて行けなかった選手は互いに成長を遂げ、甲子園でベスト4まで進んだ。
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22日の準決勝、2点を追う九回裏。東海大菅生がベンチ前で円陣を組んだ。主将の小玉佳吾君(3年)が笑顔で「ドラマ、つくろうぜ」と声をかけ、全員が「よっしゃ!」。3長短打で同点に追いついた。
小玉君にとって、昨年の主将は憧れだった。人一倍努力し、仲間の信頼を集める。昨夏、自らが主将になると重圧を感じた。
試合でミスが出ると、一方的に注意した。秋の都大会は3回戦で敗退。選抜大会を逃したことを淡々と受け止める仲間に「悔しくないのか」と泣きながら叱責(しっせき)した。冬に、怒りが沸点に達した。走り込みで力を抜いていた松井惇君(3年)をグラウンド横に呼び出し、「夏勝つために、今本気でやるんだろ」と胸ぐらをつかんだ。
春の都大会は4回戦で敗退。部員のミーティングでベンチ外の選手は「やる気がないやつを応援したくない」と松井君を批判した。どうしたら、空回りを止められるか。チームが選んだのは主将交代。「こいつが変わらないとチームは変わらない」と、新たに指名されたのが松井君だった。
就任した松井君は「小玉の苦しみがわかり、胸が痛かった」と話す。声を出し、ランニングでは先頭について行くようになった。「今さらどうした、と思われることが恥ずかしい」と打ち明けると、周囲は「吹っ切れるよう、雰囲気をつくってやる」と励ました。
助け合う仲間を見て「これが目指す野球だ。自分がチームを潰していた」と反省した小玉君は6月、主将に復帰した。西東京大会では日大三、早稲田実と強豪校を倒して優勝した。
たどり着いた甲子園準決勝。九回、同点に追いついてから松井君が打席に立った。内野ゴロで倒れ、次打者の小玉君に「任せた」。小玉君は「オーケー」と答えたが、バットが空を切って三振。延長戦で花咲徳栄(埼玉)に6―9で敗れた。
試合後、松井君はうつむきながらも「最後まで、チームのために本気になれた」。小玉君は「情けない主将についてきてくれた仲間に感謝したい。冬はつらかったけど、楽しい夏になりました」。(高島曜介)