九回裏、右前適時打を放ち、一塁で喜ぶ安原健人君(中央)と天理の選手たち=22日、阪神甲子園球場、林敏行撮影
長い冬に培った「底力」が最終回の執念を生んだ。22日の準決勝で天理(奈良)は広陵(広島)に9―12と敗れたが、九回に5連打の追い上げを見せ、「強打天理」の復活を印象づけた。
最新ニュースは「バーチャル高校野球」
高校野球の動画ページ
天理は昨夏の奈良大会決勝で惜敗。新チーム結成後の昨年9月、秋の県大会では初戦負けした。そこから春の県大会まで、「長い冬」を送った。
2年前に就任した中村良二監督(49)は強力打線で初優勝した1986年時の主将。「強打天理」を取り戻そうと基礎を重視した練習を課した。
毎週、近くのダムまでの約6キロの坂を、太ももにゴムを巻いて負荷をかけて走って往復した。打撃では毎日千回バットを振ることを心がけた。
城下力也主将(3年)は「とにかく走って、振って、肉体的にも精神的にもとても厳しかった」と振り返る。4番の神野太樹君(3年)は「1回でも多く努力して振った方が勝つと思ったからこそ耐えられた」。好守備を見せる山口乃義(だいき)君(3年)も「朝起きるのが嫌な時もあり、長い冬だった」と言う。
選手たちは、「冬の練習を積み重ねたことが底力になった」と口をそろえる。甲子園での4試合は、「底力」と記されたカードを身につけて奮い立たせた。
この日、6点を追う九回裏の攻撃前、選手たちはベンチ前で「底力を見せようや」と言い合った。先頭の代打、橋本大剛君(3年)は「まず自分が底力を出す」と、甲子園初打席で内野安打。続く神野君、城下君、安原健人君(3年)も連打でつなぐ。森本翔大君(3年)も「苦しい練習をしてきた。何とか1本を」と5連打目を見せた。
「わっしょい」の大声援が後押ししたが、試合は3点差まで迫って終わった。
三塁打を含む3安打2打点の神野君は試合後、「最後は天理の底力でした。出られるとは思わなかった甲子園で、4番目に遅い夏を終えられたことを誇りに思う」と胸を張った。ただ、冬の練習について聞かれると、「もう嫌っす、嫌ですね」と苦笑いした。(石本登志男)