春の選抜前から書きつづられた1冊の交換ノートがある。「本物(最強)のチーム作り 日本一への道」。大阪桐蔭の西谷浩一監督(47)、3年の福井主将、副主将7人で毎日回し読む、意見交換の場だった。
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初夏から2年の中川君と根尾君も加わった。そこには、初めて知る3年の思いがつづられていた。
――このままじゃ(2年が)秋勝てない
――2年の意識が変わってきた
中川君は「目の前の試合もあるのに、もう後輩の新チームのことを考えてくれていた」と驚いた。
「3年生にひっぱられてばかりだった」と根尾君は振り返る。夏の甲子園でベンチ入りした選手18人のうち2年生は7人。外れた吉峰丈太郎君(3年)は「下級生のサポートに回ります」と潔く言い切った。
甲子園の舞台でも、2年生、3年生の歯車がかみ合った。
1回戦。3年の徳山君が先発し、2年の柿木君が継投。ともに無死四球の制球力を見せた。打線も福井君が3安打1打点と引っ張ると、根尾君も2安打2打点と気を吐いた。
2回戦。藤原君と根尾君の2年生コンビの安打で先制点を挙げると、3年の泉口君も3安打。最少失点で完投した徳山君を支えた。
19日の3回戦。先発した柿木君を「楽にしてやりたい」と、「日本一の二遊間」が目標だった遊撃手の泉口君と二塁手の坂之下君が初回に併殺。捕手の福井君は懸命にリードし、逆転サヨナラ負けを喫した後は徳山君が寄り添って、励まし続けた。
試合後、西谷監督は「3年が下級生をまとめてくれた。こういうチームで勝ちたかった」と何度もタオルで顔を拭った。
大阪桐蔭の部訓は「一球同心」。春夏連覇という大きな挑戦を託し続けた一球は、学年を越え、ポジションを越え、グラウンドを越え、大きく美しい弧を描いた。(半田尚子)