死亡が確認された寺田一也さんが監督を務めるバレーボールチームは昨年、大会で優勝を果たしたという(知人提供)
福岡県古賀市の海岸で4人がおぼれた水難事故で、4人全員の死亡が12日、確認された。行方不明だった父子2人がこの日朝、海岸と沖合でそれぞれ見つかった。4人はいずれも水死と判明。海岸から沖合へ海水が強く流れる「離岸流」に巻き込まれた可能性があると県警はみている。
粕屋署によると、新たに見つかったのは福岡県宇美町の会社員小野克弘さん(36)と長男で小学生の健(たける)君(7)。
11日午後1時50分ごろ、健君と、小野さんの内縁の妻の子で次男の森尾陵ちゃん(5)がおぼれ、助けに向かった小野さんと会社員寺田一也さん(49)=福岡市東区=も波にのまれた。陵ちゃんと寺田さんは間もなく見つかり、死亡が確認された。
目撃者の話では、健君と陵ちゃんは、沖合への強い流れが生じた直後に姿が見えなくなった。現場の海岸は離岸流が発生して危険なため、古賀市は遊泳禁止にしているが、消防によると水遊びに訪れる人や釣り客が多く、水難事故が多発しているという。
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救助に向かい、命を落とした寺田さん。知人たちがその死を惜しんだ。
よく通っていた居酒屋で働く舟越ふみさん(46)は「人当たりが良く、みんな『寺田パパ』と呼んで慕っていた」。子どもが同い年で、餅つきや海水浴を一緒にする仲。事故後、「あのパパなら、おぼれる子がいたら助けに行くだろうね」と友人らと話したという。
寺田さんはこの日、海岸へ貝掘りに訪れていた。「『妹に貝を食べさせてやる』と張り切っていたのに……」と残念がった。
大手運送会社に勤務する傍ら、地域の女性バレーボールチームの監督も務めていた。指導を受けていた山田由紀さん(45)は「熱くて思いやりのある方。残念でしょうがないです」。
前町内会長の舟越保さん(71)には、チームが地域大会で優勝した昨年の打ち上げで、手作りのサンマずしを振る舞う姿が印象に残っている。「面倒見がいい人で、地域の活性化に貢献してくれた」としのんだ。(浅野秋生)