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(記者コラム)Jリーグの選手と審判、敵対者ではなく

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2002年の日韓サッカーW杯、ブラジル-ドイツの一場面


Jリーグ25年目のシーズンで2例目となる不幸な出来事が起きた。16日のJ2町田―名古屋の後半44分、反則に関わっていない選手にレッドカードが示されたのだ。


人違いの退場で誰もが傷ついた。家本主審は「世紀の大誤審」とバッシングされ、実際に反則をした町田のゲームキャプテン深津は、自分の代わりにピッチを出ていくチームメートを売ったと非難の的となった。


それぞれに悔いが残っている。ただ、審判と選手の間で行き違いが重なって誤審につながった。誰かひとりを断罪するのは酷だと思う。


名古屋の選手がこぼれ球を拾ってGKと1対1になる場面で、深津は接触して相手を倒した。反則の見極めも、得点機会の阻止で一発退場というルールの適用も、主審の対応は適切だった。


もちろん、原因を作ったのは家本主審だ。審判は試合後、判定について語ることを許されていない。周囲によると、カードを示した時点で「誰が反則したか」が頭から飛んでいた。選手に「誰なの?」と尋ねたが、「審判が決めることだ」と協力を得られなかったという。


あいまいなカード提示に、一方の深津は「自分が退場という認識がなかった。ほかの選手が判定に異議でも言ってカードが出たかと思った」という。結果的に、主審の問いかけに「自分がやった」と明確に答えられなくなった。


取材を通じて残念だったのは、互いを敵対視するような感覚を感じたことだ。ゲームを作り出す協力者というリスペクトが審判と選手の両者にあれば、人違いは防げたのではないか。


たとえば、混乱している審判を見て、選手側から誰が反則をしたのかを申し出ることはできなかったか。そんなことは理想論だと笑い飛ばされるだろうか。


両者は不信感とわだかまりを抱えたままだ。家本主審と深津の信頼回復のためにも、改めて検証する場を設けてもいいだろう。


映像で確認すると、反則の笛から退場者を誤って特定するまでの約3分半の間に、主審とゲームキャプテンは何度も言葉を交わしている。


「お互いに冷静にコミュニケーションが取れたらよかった」。試合から1週間後に聞いた深津の言葉がわずかな救いである。(潮智史)



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