広陵―天理 五回表広陵無死、中村は左中間にこの試合2本目の本塁打を放ち、塁をまわる=加藤諒撮影
(22日、高校野球 広陵12―9天理)
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名前がコールされただけで、甲子園が沸く。スイングしただけで、どよめきが起こる。動き一つで観客を魅了してしまう新たなスターが生まれた。広陵の中村が、1985年に清原和博(PL学園)が打ち立てた1大会の最多本塁打記録(5)を抜き去った。
大会4本塁打で準決勝を迎え、まずは一回1死二塁。捕手は内角に構えたが、天理の碓井涼が投じた134キロは真ん中へ。バットにぶつかった瞬間、確信した。バックスクリーンに飛び込む先制2ランに、中村は右拳を突き上げた。
99回の歴史を塗り替える一発は、1点を追う五回だった。先頭で打席に立ち、2ボールから再び134キロをたたいた。これも打った瞬間。左中間席に同点ソロを運び「甘い球を逃したくなかった。同点にしたい気持ちが強かった」。天理のバッテリーは、いずれも内角球で追い込みたかったそうだが、中村がその前に勝負を決めてしまった。
6本は満遍なく打ち分けている。左越えが2本の他、左中間、中越え、右中間、右越えが1本ずつ。バットを高い位置で構え、そのまま振り下ろす。無駄のないフォームから基本は好球必打だが、追い込まれてからも放り込む力がある。本人は絶好調の要因について「不思議な感覚。憧れの場所で結果が出るのは、甲子園の力かな」。
七回は2死満塁で、左翼線に走者一掃の二塁打。この一打で1大会の個人最多打点を上回り、塁打数でも最多を更新した。キャッチフレーズの通り「じぶん史上、最高の夏」なのは間違いないが、狙うのはただ一つ。準優勝に終わった「10年前の借りを返したい」。チームを最高の夏に導く役割が、まだ待っている。(井上翔太)