五回裏、ピンチにマウンドで、グータッチをする広陵の平元銀次郎君(右から2人目)と中村奨成君(左から2人目)=17日、阪神甲子園球場、加藤諒撮影
(17日、高校野球 広陵6―1秀岳館)
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あうんの呼吸で強力打線を封じた。17日の第1試合で秀岳館(熊本)を6―1で破った広陵(広島)。エースの平元銀次郎君(3年)と捕手の中村奨成君(同)は、同じ部屋で高め合いチームを支えてきた。
本塁打で同点に追いつかれた五回。2死から連打されて一、二塁のピンチを迎えると、マウンドに駆け寄った中村君は、平元君とグータッチをした。
2人のグータッチは、今夏の広島大会初戦から始めた。平元君が「最後の夏。楽しんでやろう」と提案し、一回の投球前にタッチしてきた。だが、この日はタイミングが合わず初回には出来ず。五回でタッチすると、2人は「落ち着けた」。後続の打者を中飛に抑えた。
2人は学校の寮では同じ部屋だ。同部屋になったのは1年生の2月ごろ。同学年は約60人いて、それまではほとんど会話したことがなかった。
当時、平元君には中村君のプレースタイルが「自分勝手なやつ」と見えていた。1年生の夏から背番号2をつけた中村君は、投手が首を振っても何度も同じコースを要求していた。平元君が中村君に「勝手すぎるんじゃないか」と注意したこともあった。
それが、同部屋になったことをきっかけに中村君は、平元君に興味を持ってみようと、平元君が部屋で聞く洋楽に耳を傾けるようになった。今では何も言わなくても平元君が聞きたいと思った曲を中村君がかけることがあるという。
試合でも、平元君が投げたいと思ったコースと中村君が要求するコースはほとんど一致する。
試合の前日になると不安で寝られなくなる平元君。夜、中村君に「まだ起きてる」と聞かれても、その不安を気づかれまいと寝たふりをする。中村君は平元君が眠れないことに気づいているが、それ以上は声をかけずにそっとしている。
中村君は「銀次郎といっしょにやって試合も楽しめるようになった」。それまでは配球のことを考えるだけでいっぱいだったが、リードに余裕が生まれると、野手の動きも見ながら指示も出せるようになった。
この日は8回を投げて1失点。先頭打者は一人も出さなかった。試合後、平元君は「途中で足がつりそうになったが、落ち着いて楽しく投げられた」。中村君は「初戦よりキレも制球もよかった。次も最少失点で抑えたい」と笑顔だった。(小林圭)