バングラデシュ・テクナフで19日、ナフ川を船で渡って避難してくるロヒンギャの難民たち。騒然とする現場で男の子は大きな声を上げ泣いていた=杉本康弘撮影
ミャンマー西部ラカイン州から治安部隊の掃討作戦によって流出した40万人超のイスラム教徒ロヒンギャの難民が、たどり着いた隣国バングラデシュでも過酷な状況に苦しんでいる。国際社会の批判が高まる中、ミャンマーの事実上の政権トップ、アウンサンスーチー国家顧問も対応を約束した。
ロヒンギャ難民、42万1千人 食料も住む場所も足りず
雨の降りしきる中、木製のボートが岸辺にたどり着いた。片手に子供を抱え、もう片方の手には水や食料を持った女性たちが、降りてくる。
18日朝、ミャンマーとの国境をなすナフ川河口のバングラデシュのテクナフ。ロヒンギャ難民の流入が続いていた。
岸辺にできた人だかりに行くと、生後4カ月のバマちゃんを抱えたタマネムさん(22)がずぶぬれになって座り込んでいた。バマちゃんは、息はあるようだったが、高熱があり、ぐったりして動かなかった。
10日ほどかかってミャンマーの村から逃れて来たという。持って来られたものは、バマちゃんにかける毛布一枚。食べるものはなく、連日雨に打たれた。
NGOの男性がバマちゃんを病院に連れて行こうとしても、我が子をなかなか手放そうとしない。病院に連れられる子の後を追いながら繰り返した。「私の大切な子。大切な子」
サイードさん(25)は、娘のラハナちゃん(4)を連れて逃げてくる途中、動けなくなった70歳の母親を置いてきたという。「母は『ラハナを大事に育てて』と言ったが、私はとんでもないことをしてしまった」
国境沿いのコックスバザールでは、キャンプに入れない難民が、数キロに渡って道ばたにあふれかえっている。雨でぬかるんだ泥の道を、子供は裸のままで、大人は裸足で食料を求めて歩き回る。運良く難民キャンプに入れても、トイレがなく、し尿が生活用水と混ざる衛生環境下で、下痢や発熱などが相次いでいた。
現地で救援活動をする医師は「コレラなどの感染症がいつ広がってもおかしくない。1万人以上が死にかねない状況になってしまう」と危機感を募らせる。
妊娠7カ月のカレダさん(25)は木の棒と布でつくった仮設テントの中で、突然、出血してしまった。「無事に子供を産むためには、どこに行けばいいですか」と問いかけた。
この時期のバングラデシュの気…