「牛乳飲む?」「飲む!」。バナナやパンを前に、生徒たちの楽しそうな声が響いた=12日、福岡市西区の市立西陵中学校、山下知子撮影
学校や地域が子どもたちに朝ご飯を提供する動きが広がっている。福岡市では七つの小中学校がパンやバナナを出している。沖縄などでは朝ご飯を出す子ども食堂も生まれた。朝食の習慣を身につけさせ、健やかな成長を促すのが狙いだ。
12日朝。福岡市西区の市立西陵中学校の調理室に、生徒たちが続々と入って来た。あっという間に部屋はいっぱいに。調理台にはバナナとクロワッサン、ロールパンが並び、紙コップに牛乳が注がれていく。
2年の女子生徒は「何となく、朝ご飯を食べてこなかった」。部活の朝練後に参加した1年の男子生徒は「家で食べてきたけど、友達と一緒で楽しい。これまでに最高でバナナ7本食べましたよ」と言って親指を立てた。この日は全校生徒302人のうち、約80人が集まった。
西陵中では5月から、毎週火曜日に朝ご飯の提供を始めた。バナナは輸入時の検疫検査でサンプルとして開封され、問題がなかったもの150本ほどを、フードバンクを通じて輸入企業から譲り受ける。パン約200個と牛乳約25本は地元生協から。スクールソーシャルワーカーが食材を学校に届け、住民が準備や片付けを担う。
きっかけは、生徒の朝食欠食率の高さだ。今年度の福岡市の生活習慣調査では、朝ご飯を「全く食べていない」「あまり食べていない」と答えた西陵中の2年生は12・5%。市平均の6・6%を上回った。1年生も市平均6・4%に対して9・7%だった。「授業中もぐたっとしている子が多く、食べていない影響と考えた」と田中弘校長(54)は説明する。
親や家庭のやることだとも考えたが、「食べて調子の良さを実感することが大事。そこから準備を親に促したり、家で自発的に食べたりする子が出てきてくれれば」と決断した。
隣接する市立西陵小も5月から、毎週水曜日に実施している。朝食の習慣がないという6年の女子児童は「水曜は給食までおなかがもつけど、他の日は3時間目で力尽きる」。
15年度に市内で初めて取り組んだ市立城香中では昨年度末、朝食会場に来た生徒にアンケートを実施。9割が「楽しい」、4割が「やる気が出る」と回答した。熊本修治校長(54)は「授業に集中できる生徒が増えてきた」と話す。