ヤマトHDの宅配便取り扱い個数と宅配事業の営業利益の推移
宅配便最大手のヤマトホールディングス(HD)は28日、2019年度末までの中期経営計画を発表した。違法な長時間労働が常態化した宅配現場の負担を軽減するため、夜間配送に特化したドライバーを新設して残業時間を大幅に減らす「働き方改革」を柱に据えた。ただ、人手不足が加速するなか、計画実現へのハードルは高い。社内外から計画の実効性を疑問視する声が出ている。
「我々にはインフラとしての社会的使命がある。働き方改革を実行し、社会、社員に利益を還元できる企業グループにする」。ヤマトHDの山内雅喜社長は計画を発表する記者会見でそう強調した。
荷物量の急増や人手不足といった経営環境の激変を受け、2016年度末に公表する予定だった中期経営計画の発表は半年延期された。この日公表した計画は「働き方改革」を最優先の課題に掲げ、残業時間を正社員は半減、パートは大幅に抑制するとした。労働時間や休日、給与体系を選べる制度も設ける。働き方改革に関連し、約1千億円の費用が発生すると見込む。
18年度までは荷物量を抑制し、その間に宅配事業の構造改革に挑む。改革の柱になるのが、インターネット通販の普及で荷物量が増えている夜間や、宅配ロッカーへの配送を担う「配達特化型ドライバー」の新設だ。7時間勤務の契約社員として、19年度までに1万人超を確保する計画だ。正社員のセールスドライバー(SD)が早く帰れるように負担を軽減する狙いだ。
燃料費や人件費の変動を法人客の運賃に反映しやすくする仕組みの導入も正式に表明した。人件費の上昇が続くなか、一度決めると運賃が数年間固定される今の仕組みを改め、「継続的に運賃を上げられるシステムにする」(山内氏)。運賃決定方法の見直しなどで荷物量を17年度に18・3億個、18年度に17・7億個、19年度に18・4億個にする計画だ。当面は16年度(18・7億個)より少ない水準に抑制する。(石山英明、森田岳穂)