2016年の全日本総合選手権、ゴール下に攻め込むトヨタ自動車の大神雄子(左)
元日本代表で、長年日本の女子バスケット界を率いてきたポイントガードの大神(おおが)雄子(34)=トヨタ自動車=が、今季限りでの引退を表明した。引退後は指導者を目指すといい、「夢は五輪の日本代表監督」。大神の最後のシーズンとなる今季のWリーグは7日に開幕する。
「自分自身のラストの集大成のシーズンにしたい」。大神が今季限りでの引退を自身のフェイスブックに記したのは、米国で自主キャンプをしていた6月11日。シーズンが始まる4カ月も前に発表したのは、「自分で思っているだけでなく、口にすることでモチベーションに変わると思ったから」だという。
山形県出身の大神は愛知・桜花学園を経てジャパンエナジー(現・JX―ENEOS)に加入。2004年アテネ五輪にチーム最年少の21歳で出場した。08年には米女子プロリーグ(WNBA)で史上2人目の日本人選手になった。
今月17日に35歳になる。これまで大きな故障もなく、昨季のトヨタでは先発のポイントガードとして準優勝の原動力となった。引退は早いようにみえる。自分でも「正直言って、やろうと思えば40歳までやれる」と話す。
そんな中でもあえて引退を選んだのは、「何を始めるにしてもルーキーシーズンは必ずもがく。その時にがむしゃらにやるためには若い方がいい」と考えたからだ。山形大の監督などを務めた父の影響で、子どものころから「引退後は指導者になる」という夢はずっと漠然と持ち続けていたという。
どこでコーチとしてのキャリアを歩み始めるかはまだ白紙。だが「Wリーグだけでなく、米国も欧州もある。世界のバスケを見てみたい。女子だけでなく男子もそう。Bリーグもチャンスがあれば見てみたい。いずれは五輪代表のヘッドコーチになれたらいい」と夢を膨らませる。
ただ、セカンドキャリアへの思いはしばらく封印。選手として最後のシーズンに集中するという。今季、大神を慕って富士通から移籍してきた長岡萌映子ら代表クラスの若手が多数トヨタに集まり、JX―ENEOSの10連覇阻止に期待がかかる。「集大成として、必ず優勝する」と意気込むと同時に、「選手でいられるうちだから学べることもたくさんある。(トヨタのドナルド・)ベック(監督)から、いいバスケットを吸収したい」と話す。(伊木緑)