

赤字運営が続く雑誌専門の図書館「大宅壮一文庫」(東京都世田谷区)が、知名度アップに乗り出している。インターネットで窮状を訴えて資金を募ったのに続き、先月は東京・新宿でフォーラムを開いた。だが利用者の減少という根本課題の解決への道筋は見えておらず、模索が続く。
(天声人語)大宅壮一文庫の財政難
「メディアの地盤沈下とともに文庫利用者も減っている」。先月29日、東京・新宿であったフォーラム。大宅文庫理事長の大宅映子さん(76)は、冒頭のあいさつでそう嘆いた。
「フェイクニュース時代のノンフィクション」と題し、津田大介、武田徹、森健のジャーナリスト3氏が壇上で意見を交わした。同文庫がこの題を選んだのは、相次ぐ雑誌の休刊でノンフィクション作家らの活躍の場がなくなっている現状がある。「マスコミと大宅文庫は車の両輪。ノンフィクションにはもっと元気になってもらいたい」と鳥山輝専務理事(70)。
文庫職員の間で語りぐさになっているのが、1974年、立花隆氏が「文芸春秋」で発表した「田中角栄研究」だ。執筆に必要な資料の多くが、設立間もない文庫が収蔵する雑誌から集められた。角栄退陣へとつながる大騒動の陰の立役者となったことで、記者やフリーライターらが連日、文庫に通い、編集者同士の意見交換の場にもなった。蔵書は現在、約78万冊。年1万冊ずつ増えている。
だがネット検索が手軽にできる今、雑誌が身近だった時代は去りつつある。大宅理事長は2年ほど前、「大宅文庫って岩波文庫みたいなものでしょ」と知人に言われ、知名度の低さに衝撃を受けた。
そんな状況に光が差したのがインターネットによる資金集め、クラウドファンディング(CF)だった。5月18日~6月30日の募集期間に、759人から853万5千円が寄せられた。目標額の1・7倍に達した。
CFのサイトには編集者や作家…