2度目の七冠独占を果たした井山裕太新名人=23日、大阪市北区、堀内義晃撮影
今月、囲碁名人戦七番勝負を制した井山裕太・新名人(28)は、名人位奪還とともに前人未到の2度目の七大タイトル独占を果たした。偉業を成し遂げたエネルギーの源泉、中国や韓国の後塵(こうじん)を拝する世界戦への思い、AI(人工知能)の出現で激変する囲碁界のこれからについて聞いた。(聞き手・大出公二)
――2度目の七冠独占です。
今期名人戦は自分でも想像しなかった2度目をかけたシリーズになりましたが、それは意識せず、名人を失った昨年の名人戦で見えた課題を乗り越えようという思いで臨みました。
――課題とは。
昨年4月に初めて七冠を達成してから、それがいつまで続くのか、誰が崩すのかが注目された。自分自身も気持ちの面で勝たなければ、守らなければという方向にいってしまい、自ら転んでしまった。今回は全体に安定したパフォーマンスを示せて、成長できた部分を出せたと思う。
――最近、碁に向かう気持ちが結果より内容にシフトしていると聞きます。
昨年七冠という大きな目標を達成したことで、さらに挑戦していこうという意識が芽生えた。また名人戦と並行して行われた世界戦でまずい碁を打ち、負けたことより内容的に何も残せなかったふがいなさが情けなく、一手一手、納得のいく手を打とうという思いが強まっていました。
――それがかえって好結果につ…