記者会見で東京都が示した調停案を受諾しない理由を説明する大田区の松原忠義区長=29日午後、区役所
東京湾の「中央防波堤埋め立て地」の帰属を東京都の大田区と江東区が争っている問題で、大田区議会は29日に臨時の本会議を開き、都の調停案を受け入れず、境界確認を求めて提訴することを全会一致で可決した。大田区は江東区を相手取り、すみやかに提訴する方針。
中央防波堤埋め立て地には、2020年東京五輪・パラリンピックでボートとカヌー(スプリント)の会場となる「海の森水上競技場」などが設けられる。
両区は五輪までの解決をめざしているが、ともに100%の帰属を主張。都の自治紛争処理委員が今月16日に示した調停案は、埋め立て地約500ヘクタールのうち、86・2%を江東区、13・8%を大田区の帰属とする内容だった。
大田区側は、埋め立て前の海域は昭和30年代まで養殖のりの漁場として区民が使っていたと訴えてきた。松原忠義区長は本会議後、「調停案は、現在の水際線による等距離線を基準に境界を確定させており、極めて不合理。歴史的沿革を正しく評価し、境界を確定すべきだ」と述べた。
一方、江東区の山崎孝明区長は大田区の対応について、「調停申請を行う以上、両区ともその結果を受け入れると固く約束してきた。大田区の大局観を失った行為は、後世に大きな負担を残すことになりかねない」とのコメントを出した。
都によると、帰属を巡る問題で裁判になるのは、都内では初めてとなる。小池百合子知事は「大田区議会の議決は大変残念。必要な対応を検討していく」とのコメントを出した。(辻健治)