東京電力福島第一原発事故で、全町避難が続く福島県双葉町。中秋の名月の10月4日夜、帰還困難区域の新興住宅地を、長時間露光で撮影した。夜間は立ち入り禁止のため、同町と住民の協力のもと無人カメラを設置。明かりが消えた住宅に、月の光が差し込んだ。
人が消えた福島の町、緑がのみ込む 原発事故7回目の夏
「一つ一つ妻と考えに考えて設計した家。建ててまだ4年しか経っていなかったんです」と、この家に住んでいた男性(43)はため息まじりに話す。
月明かりが、子ども部屋に残る写真を照らす。震災当時、7歳と5歳だった子どもたちは、今では中学2年生と小学6年生に成長した。一家は現在、茨城県内に新たに建てた家に暮らす。
幼少時代を避難先で過ごした子どもたちには、「双葉」が故郷という認識はない。「どこが故郷かと聞くと、(一時避難していた)埼玉と答えます」。帰還困難区域は15歳未満の立ち入りが禁止され、子どもたちは事故後、自宅に一度も帰っていない。
「どうやって『双葉』を子どもたちに伝えていけるのか」。思い出が詰まるはずだった家は、中間貯蔵施設予定地のため取り壊される。(写真・文 竹花徹朗 小玉重隆)