福岡市西区の路上で2016年2月、予備校生の北川ひかるさん(当時19)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた元少年(21)に、福岡地裁(裁判員裁判)は31日、懲役20年(求刑懲役22年)を言い渡した。平塚浩司裁判長は、元少年の責任能力を認め「被害者に落ち度はなく、無念さは察するに余りある」と述べた。
判決によると、元少年は同じ予備校に通っていた北川さんに交際を申し入れたが断られた。その後、北川さんが自分の秘密を言い広めたと考えるようになり殺害を決意。2月27日午後8時50分ごろ、西区姪の浜の路上で、ナイフ2本で多数回刺したり、おの1丁で殴ったりして殺害した。
争点は、元少年の責任能力の有無と程度だった。弁護側は「幻聴があり、統合失調症の影響で、心神喪失か心神耗弱だった疑いがある」と主張。判決は、精神鑑定を担当した医師の証言などから、元少年には精神障害などがあり犯行に影響を及ぼしたと認めたうえで、約10分後に自首するなど善悪の判断はついたとし、さらに、数日前に大学入試の2次試験を受けるなど自分の行動をコントロールする能力はあり、完全責任能力があった、と判断した。
平塚裁判長は量刑の理由について「背後からいきなり襲いかかり、馬乗りになるなどしながら59カ所もの傷を負わせて殺害した。態様はしつようであまりに残忍。被害者は将来のある若さで突如、命を奪われ、遺族が厳しい処罰を望むのも当然。同種事案の中でも重い部類に属する事案だ」と説明した。
北川さんは熊本県出身で、親元を離れ浪人生活をしていた。2月25日に大阪大学法学部の2次試験を受験。その2日後に殺害された。事件後に阪大に合格していたことがわかった。(加藤美帆)
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判決後、北川ひかるさんの遺族は弁護士を通じて「娘に非がなかったということを裁判所に認めていただき娘の名誉を守ることはできましたが、娘が帰ってこないことにかわりはなく私たち遺族の悲しみはぬぐえません」とのコメントを出した。