県立医科大の研究チームの学生や教授ら=和歌山市紀三井寺
出生前に胎内で浴びる男性ホルモンが多いほど、女性の月経前症状が重くなる可能性があることが、和歌山県立医科大の研究でわかった。金桶吉起(よしき)教授=神経生理学=や学生らでつくる研究チームが、今年9月にスイスの学術誌で発表した。
月経前症状は、腹痛や頭痛、イライラなど月経前の3~10日間続く様々な身体的・精神的症状のこと。成人女性の9割以上が経験しているといわれ、治療が必要なほど重い場合もある。症状の程度は人によって様々だが、なぜ症状の重さに個人差があるのかが分かっていなかった。
研究チームは「出生前に浴びた性ホルモンが、症状の重さに影響しているのではないか」と仮説を立て、性ホルモン量の推定に使われる右手の薬指と人さし指の長さの比率(指比)に着目した。和歌山市内の女子大学生403人の指比を調べ、症状に関するアンケートを実施した。
その結果、右手の薬指が人さし指に比べて長いほど、諸症状が重くなる傾向がみられたという。従来の研究で、「男性ホルモンを出生前に多く浴びると、人さし指に比べて薬指が長くなる」という傾向が分かっており、今回の研究で、「出生前に男性ホルモンを多く浴びると月経前症状が重くなる」という可能性が示されたことになる。
研究では、肩こりや頭痛などの「痛み」や「集中力」、めまいや冷や汗などの「自律神経反応」、泣きたくなったり不安になったりする「否定的感情」、息苦しさや胸の圧迫感といった「気分の制御」などの症状が指比と相関関係にあることがわかったという。一方で、眠気や能率低下などの「行動の変化」と体重増加や肌荒れなどの「水分貯留」は指比と関係がなかった。
金桶教授は「多くの女性が悩まされている月経前症状の原因を探る手がかりがつかめた」と話し、「今後、治療や緩和ケアにつながる可能性がある」と期待を語った。(杢田光)