取り締まり対象となる「あおり運転」の例
神奈川県の東名高速で6月、夫婦が死亡、娘2人がけがをした事故で、自動車運転死傷処罰法の過失運転致死傷容疑などで逮捕された建設作業員石橋和歩容疑者(25)について、横浜地検は31日、より罰則の重い同法の危険運転致死傷罪と暴行罪で起訴した。
「あおり運転」が重大事故に発展したケースは過去にも起きている。
栃木県矢板市では2012年、後ろから急接近を繰り返すなどされ、速度を上げて逃げようとした車が出合い頭の事故を起こし、1人が意識不明の重体となった。同県大田原市では2007年、後ろからクラクションや蛇行運転を約1・8キロにわたり繰り返され、ハンドル操作を誤ってガードレールに衝突して2人が死傷。堺市でも同年、約2キロにわたって時速130キロの車に幅寄せされるなどされた末にぶつけられ、バイクの男性が亡くなった。
横浜市緑区の山本正一さん(55)は障害があるが、検査をパスして免許を取得。車の運転を25年続けている。
今年9月の夕方、神奈川県内の東名高速を時速約100キロで走行中、急に割り込んできた車に驚いて停車を余儀なくされた。障害の影響で足の筋肉が固まってしまう症状が出て、ブレーキを踏んだまま動けなくなってしまった。車内に搭載したドライブレコーダーには、山本さんの車の前に急に割り込んできた車が、ブレーキランプを何度も点灯させたうえ、走り去る様子が映っている。
「追突されて大きな事故に巻き込まれなくて本当に運がよかった。安全に道路を走るために免許を取ったことを忘れないで欲しい」と訴える。
警察庁によると、前の車との車間距離を極端に詰める嫌がらせについては、道路交通法の車間距離の保持違反にあたる。昨年1年間の摘発は7625件(うち高速道路は6690件)あった。ただ、あおり運転の割合は不明という。ほかにも、みだりに進路を変える▽不必要な急ブレーキをかける▽クラクションを鳴らして威嚇する▽左側から追い越す――といった行為は取り締まりの対象になるという。
一方、日本自動車連盟(JAF)が昨年、全国のドライバー6万4677人を対象にした調査では、55%はあおられた経験があると回答。また、63%は無理な割り込みをする車が多いと感じると答えていた。
こうした危険な運転に対してドライバーはどう対応すればいいのか。過去には後続車に密着され、危険を避けるために法定速度を超えた運転を有罪とした裁判例もある。その判決は「進路変更や路側帯に退避して追い越しを促すことが常識的な対処」と指摘している。警察庁も「安全な場所に避難して110番通報をしてほしい」と呼びかける。(浦野直樹)