インタビューに応える葛西紀明=白井伸洋撮影
来年2月9日に開会式がある平昌(ピョンチャン)冬季五輪(韓国)まで、1日であと100日となった。ノルディックスキー男子ジャンプの葛西紀明(土屋ホーム)は、45歳で日本勢最多を更新する8回目の五輪出場をめざす。「レジェンド(伝説)」は、まだ手にしていない金メダルだけを見据える。
個人ラージヒルで銀メダル、団体で銅メダルを獲得した2014年ソチ五輪から3年。何度も経験した五輪間の周期は、これまでよりも短く感じたという。
「あっと言う間に来た、という感じ。調子は悪くないので、非常にワクワクしている。ソチ前と似たような気持ちと雰囲気がある」
ソチ五輪から帰国後に結婚。16年1月に闘病生活を続けていた妹の前川久美子さんが亡くなったが、約2週間後に長女璃乃(りの)ちゃんが生まれた。「(妹と1997年に母の)2人の家族を亡くし、新しい家族が2人できた。妻と娘がいることで、モチベーションが全く違う。新しい家族のために頑張る気持ちになれる。妻は料理や体のケア、色んな方面でサポートしてくれて、すごく力強い。かわいい娘は、いつもいい笑顔でいてくれ、それに応えたい」
昨季は低迷した。ワールドカップ(W杯)で、上位30人による2回目に進めないこともあった。2回上がった表彰台は、五輪で実施されていないフライングヒル。それ以外の個人種目では10位が最高だった。「昨季はアプローチ(助走)で悩んだ。世界のトップと(時速)1キロ以上離されることも。それだけで(飛距離は)3~5メートル離される」
6~7月の約3週間の欧州合宿で約30本飛んだ。例年の10~15本に比べ、異例だった。
「ソチ五輪でメダルを取った後は、テレビ番組の出演や講演などで非常に忙しく、納得いくような練習はできなかった。今季は夏場から番組出演や講演は減らして、練習に時間を割いてきた。(助走の不安を)解消するために本数を飛ぶようにした」
「腰やひざがたまに痛くなることもあるが、うまくごまかしながらできた。だいぶ(助走の)スピードも出るようになった。これなら世界と戦っていけるんじゃないかなと思っている。非常に順調な仕上がりになっていると思う」
今季のW杯は11月18日にポーランドで開幕戦を迎える。個人戦で14年11月以来の優勝を果たし、自身の最年長優勝記録(42歳5カ月)を更新することを狙う。一方で、09年から土屋ホームの監督としての顔も持つ。女子金メダル候補の伊藤有希(23)ら3人の教え子を五輪に導くことも目標だ。
どれだけ経験を積んでもシーズン開幕の前は期待と不安が入り交じるという。
「いつも以上に不安が強い。やはり(五輪出場)連続8回という記録が頭にある。みんなの期待がプレッシャーになってもいるけど、そこに打ち勝って五輪代表に選ばれたい。五輪では一番輝いた金メダルしか見えていない」(笠井正基、勝見壮史)
■平昌五輪の日本勢出場枠と代表決定時期
スキー、スノーボード 各種目最大4人。11~1月
スピードスケート 種目ごとに最大2~3人。12月下旬
ショートトラック 男女ともリレー出場なら5人。12月中旬
フィギュアスケート 男子3、女子2、アイスダンス1で決定。12月下旬
アイスホッケー 女子が出場権獲得。男子は出場逃す
カーリング 男子はSC軽井沢ク、女子はLS北見が出場
バイアスロン 女子は5枠獲得。男子は1月下旬まで出場権争い
ボブスレー 最大3枠。男女とも2人乗りで目指す。1月中旬
スケルトン 最大3枠。1月中旬
リュージュ 出場目指さず
〈かさい・のりあき〉 1972年6月、北海道下川町生まれ。東海大四(現東海大札幌)高1年の88年にワールドカップ(W杯)に初出場。個人戦528試合出場は世界歴代最多記録。W杯通算17勝は、男子で日本最多、世界歴代16位。