高齢の患者が多く、呼吸困難といった苦痛も大きい心不全や脳卒中など循環器の病気について、厚生労働省は緩和ケア体制の整備にのりだす。16日に有識者による初会合を開き、望ましい施設の体制やケアの内容を検討する方針を決めた。比較的体制が整っているがんとの違いや共通点を検証して報告書をまとめる。
厚労省によると、2007年にがん対策基本法が施行され、がん患者への緩和ケアは広がり始めた。だが高血圧を除く循環器の病気では、患者の約5割が通うのは規模の小さい診療所で、緩和ケアチームがあるのは0・01%にとどまる。
心疾患の死亡者のうち約4割を占め、増加傾向にある心不全を中心に議論を進める。悪化と回復を繰り返しながら徐々に体の機能が低下する心不全の場合、治療をやめる判断が難しい。患者が意思を決める際の支援があるか、医療職による地域の連携があるかといった点も考慮して、緩和ケアの内容を検討するという。
出席したメンバーからは「循環器の場合、自己管理の部分をどのように支援していくかが重要だ」「患者本人の意思と治療が異なる場合も多く、家族や医師への啓発も必要になってくる」などの意見が出た。
世界保健機関(WHO)の緩和ケアの定義では、対象をがんに限っておらず、命を脅かす病気すべてで、痛みや身体的・心理的問題などに早期から対処し、生活の質を改善するものとしている。WHOの調査によると、終末期に緩和ケアを必要とする疾患別の割合は、1位が循環器(38・5%)で、2位はがん(34%)だった。日本心不全学会なども、がん以外の緩和ケアの必要性を指摘している。(黒田壮吉)