インドネシアの首都ジャカルタで今年7月、記者会見後に記者たちに手を振るノファント国会議長=AP
インドネシアで巨額汚職事件の容疑者の1人に認定されたノファント国会議長(62)が、数々の「逮捕逃れ」ともとれる行動を繰り返し、批判を浴びている。病気を口実に出頭要請を拒み、逮捕状が出ると翌日に交通事故で負傷したとして再入院。取り調べすらできない状態が続いている。
事件は、国民身分証の電子化事業の予算5兆9千億ルピア(約490億円)のうち、2兆3千億ルピア(約190億円)が不正に水増しされたというもの。水増し分は政治家や官僚ら数十人が山分けし、予算承認の便宜を図ったとされるノファント氏は1兆ルピア(約83億円)以上を得た疑いがもたれている。汚職が深刻な同国でも前代未聞の事件だ。
捜査を担当する汚職撲滅委員会(KPK)が7月、ノファント氏を容疑者に認定したところ、同氏は認定を不服として地方裁判所に提訴し、9月上旬に病気を理由に入院。出頭要請を再三、拒否した。
証拠に問題があったとして、9月下旬に地裁が容疑者認定を取り消す判決を下すと、ノファント氏は退院。KPKが再び容疑者に認定して11月15日に逮捕状を取ると、こんどは乗っていた車が電柱に衝突して負傷したとして、16日に再入院した。入院のたび、酸素吸入器などを着けてぐったりした写真がノファント氏側から公表されている。
英字紙ジャカルタ・ポストは17日付社説で「脱走名人の能力をまたも見せた」と批判した。
国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表した2016年版の「腐敗認識指数」によると、インドネシアは主要20カ国・地域(G20)では、ロシア、メキシコ、アルゼンチンに次いで腐敗がひどい国とされている。(ジャカルタ=古谷祐伸)