判決があった佐賀地裁=佐賀市中の小路
きょうも傍聴席にいます。
もう死んでくれ。俺も死ぬから。すまんのう、すまん……。男は下半身不随の妻の首に延長コードを巻き、締め付けた。20年以上介護を続けてきた末の悲劇。仲むつまじかった夫婦を追い込んだものは何か。
特集:きょうも傍聴席にいます。
11月13日、佐賀地裁で開かれた裁判員裁判の初公判。
裁判長に認否を問われると、江口末秋被告(71)は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
起訴状によると、江口被告は昨年9月7日深夜から8日未明の間に、自宅で下半身不随だった妻(当時71)の首に延長コードを巻いて締め付け、窒息させて殺害したとされる。
検察側は初公判で被告が殺害の様子を記録したICレコーダーの録音内容を証拠提出し、読み上げた。
名前を呼びかける被告に、「なんね」「なんしよん」と応じる妻。「もう死んでくれ。俺も死ぬから。死んでくれ、死んでくれ……」
被告はそう言い、妻の首に延長コードを巻いて絞めあげた。被告の嗚咽(おえつ)。
「こんなこと、したくなかったのに。すまんのう、すまん」。そして妻の名を呼んだ。
弁護側は、この録音をもとに、妻は犯行当時、目が覚めていたが、抵抗した跡が全くないとして、殺害に妻の承諾があったと主張。殺人罪よりも刑が軽い承諾殺人罪にあたる、などと訴え、裁判の争点となった。
冒頭陳述や公判などから経緯をたどる。
佐賀県鹿島市出身の被告と、宮崎県出身の妻は見合いで出会った。「私のひとめぼれだった」と被告。1982年に結婚。84年には大阪府内でうどん店を開いた。妻も店を手伝い、経営はうまくいっていたという。91年、「老後の蓄えができた」と店を閉め、2人は鹿島へ転居。93年、妻は自転車事故で脊椎(せきつい)を損傷し、胸から下が不自由になった。
介護生活が始まった。大変ながら、海外旅行に行くこともあり「楽しい、充実した時間だった」。だが、2009年10月に大阪府箕面市に移ったころから生活が暗転する。
初公判での被告人…