ジャパネットたかた創業者の高田明さん ジャパネットたかた創業者の高田明さん 海外に留学する若者が減っているといいます。「内向き志向」と懸念する見方がある一方、海外だから経験が積めるとは限らないとの意見もあります。会社員時代に西ドイツに駐在した経験のあるジャパネットたかた創業者・高田明さんに若い人たちへのメッセージや今を生きる哲学などについて聞きました。 ◇ 海外に行った方がいいか、行かない方がいいか、全くどっちがいいということはありません。 できるだけいろんなところの現場を踏んで見聞きすることは、「井の中のかわず」にならないためにも、すごくいいこと。日本だけにいたら、日本しか見られない。海外に行ったら日本では見えないものがある。そういう意味では、場数を踏む、つまり「現場主義」。そこの中で学ぶことがすごく多いから、海外に行かないよりも行った方がいいのではないかなぁ。 今は国際化、IT化、グローバル化が進んでいます。以前なら日本だけでよかったことが、国内での経験だけではなかなか(世の中で)活用できなくなっています。だから(海外を)見て歩けばいいと思う。じゃあ、どこがいいかというと、アメリカ、イギリスやヨーロッパ、当然、機会があれば開発途上国も見ていく。自分の立ち位置の中で、経験をすればするだけ、たくさんの人に出会い、いろんなことに出合う。そういう中から自分自身の考え方の幅も広くなっていくものです。 明治維新の時代、海外に見学に行って日本で活躍した人たちがいて、欧米の文化を取り入れようとしたことで近代化ができたとなれば、海外に出た成果は大きかったと言えます。海外に行けたら行った方がいいと思います。 僕の場合、大学を卒業して就職して、23歳で8カ月くらい西ドイツのデュッセルドルフに赴任しました。海外に行きたいと希望していて、学生時代に英語を私なりに勉強していた結果として実現しました。その時の経験というのは、当時は気付かなかったことでも、この年齢になった時にいろんな場面で勉強させてもらうことがたくさんあるんですね。それは自分の人生の中にすごく生かされていると思う。 当時は冷戦がまだ厳しい時で、ソ連圏とアメリカというのは、本当にすごくて。東ヨーロッパはほとんどがソ連圏で、ポーランド、東ドイツ、ハンガリーなんかなかなか行けない。そこを見て歩くことによって、こういう「共産圏の国」ってあるんだなぁって感じました。どっちかというと貧乏な国なんだなぁって感じました。でも人間は温かいし、やっぱり人間は同じなんだって。 でも、ポーランドに行ってもビールをどこでも飲めなかったりとか、ケーキが配給制で並んだりとか、卵を食べたら臭いがして、いい卵は輸出用でドルを稼ぐけど、卵の上に「A」「B」「C」のスタンプが打ってあって、「B」とか「C」を国民が食べるとか。ちょっとしたことなんだけどそういうものを感じるんです。イギリスに行って、お肉を食べたらやっぱり味覚に思ったより合わなくて、日本の和牛ってこんなにおいしいんだって、今になって実際に感じてくるとか。 当時、勤務先の社長と1日、イタリアをずっとバスで移動していた時、僕は若くて眠ってしまったんです。その社長から「高田君、窓から景色を眺めるのも勉強になるんだよ」って言われました。その言葉が自分の中に四十数年間残っていて、僕がその後社員を100人とか1千人とか使うようになった時、社員に語っていました。「何でも普通に見えることを意識して生きることって、すごく自分の知識にもなるし、人生を豊かにしていく」と。そういうヒントっていろんな所で学ぶことがあるんですよ。 ドイツに赴任した当時、現地で若い人たちと話すと、皆ほとんど英語をしゃべるんです。「ドイツなのにどうして英語をしゃべるのかなぁ」と思ったんです。それで、語学教育の方針が日本とは違うんだと気付いたんです。日本は学校教育の中で英語をしゃべる人が少ないし、しゃべる教育がないんだって。これは違うんじゃないかなって。そういうものは、やっぱり若い時に海外に行った自分の経験の中で覚えていることがいっぱいあるんですよね。 海外に行けない理由、自分で作っている? 近ごろは海外留学する日本人は少ないじゃないですか。実際、中国なんかは留学生が多いと報道されているのを見ると、日本の若者も何で海外に行かないのかと考えます。やっぱり日本が豊かになって、それでことが済むと思っている人がいっぱいいると思う。けれど、それはそこの世界の中にいて感じることであって、外に出てみて、もっと世の中を変えていきたいと思う若者が出てくることが、社会を変えていくことになるんだと思います。 若い人で海外に行けない人というのは、行けない理由を自分で作っているんじゃないだろうか。行くっていう意志が負けているのかもしれない。私は大学4年の時、1年休学してヨーロッパに行こうと思ったんです。友人と2人で。お金は、ちょうど大阪万博の頃で、そのために朝から晩までアルバイトをしたんです。結果的に僕は都合で行けなかったんですけど、友人は行きました。 彼はパリ、ドイツのシュツット… |
「老後とは老後を考えた時から」ジャパネット高田明さん
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