試合後のインタビューに応じる三河の鈴木貴美一監督
バスケットボール男子Bリーグの三河が、19日の横浜戦でリーグ新記録となる16連勝を達成した。今季初戦の栃木戦に敗れた後、翌9月30日の栃木戦から続く連勝で、現在16勝1敗。創設70年、前身のアイシン時代に全日本総合選手権を9度制している名門クラブだが、好調の背景には昨季開幕した「Bリーグ効果」があったようだ。
19日の横浜戦は第1クオーター(Q)で最大11点のリードを許したが、三河ベンチは慌てなかった。鈴木貴美一監督は「相手はかなり飛ばしている。必ずバテる」と予想。第2Qからは速攻中心に攻めることを指示した。これが奏功。第2Qだけで38得点を挙げて逆転した。
「速攻」は今季の三河の変化を表す象徴だ。開幕前の9月11日、B1全チームの選手が一人ずつ集まった開幕前会見の囲み取材で、エースの比江島慎が「今年は速い展開のバスケットを目指している」と語った。居合わせた記者らは思わず顔を見合わせた。
三河の攻撃といえば伝統的に、速攻を出さずに球を運び、時間を十分に使ってハーフコートで攻め、ゴール下で確実に得点するスタイル。「速い展開」とは対極だったからだ。
鈴木監督は「ハーフコートの攻撃は絶対的な自信があったが、(昨季までは)ベテランが多くてあまり速攻を出せない、出せる時も我慢する、みたいな省エネのバスケだった」と明かす。今季はA東京から松井啓十郎、北海道から西川貴之、京都から村上直ら「走れる」選手を補強。新たな攻撃スタイルが加わった。
プレースタイルを変えた背景には、Bリーグ開幕によって観客にも意識を向け始めたことがある。鈴木監督は「勝利を目指しつつ、お客さんにも楽しんでもらわないといけない。ゆっくりゆっくり攻めてただ勝てばいいわけではない」。そのうえで「外からの3点シュート、速攻、豪快なダンクシュートの三つがバスケットをやったことない人が一番喜ぶプレー。これを多くしようとしている」。
成果はしっかり出ている。16連勝を達成した19日の横浜戦には、今季最多の3051人が訪れ、会場をチームカラーの青に染めた。本拠の愛知県刈谷市は、メインスポンサーのアイシン精機を含め、トヨタ系の部品メーカーが集積する企業城下町。鈴木監督は「以前はスポンサーや社員の人たちが無料で来ていたし、(Bリーグ1季目の)去年もそういうことがあったが、今年は社員を含めてほとんどがお金を出してきてくれるお客さん」と手応えを語る。
「それがチームのエネルギーにつながり、こういう結果(16連勝)になった。いいバスケットをして、お客さんと一緒に勝利して喜んでいきたい」(伊木緑)