市村正親さん=山本友来撮影
「最後の同窓会」に主演
「何もない普通の人生」にやりがい 市村正親さんに聞く
これまで多く演じてきたドラマチックな役とも、スポットライトを浴び続けてきた自身の人生とも正反対だ。「どういうふうにやるかな、と不安だった。どちらかと言うと舞台用の濃い顔だしね」
「最後の同窓会」(朝日系26日午前10時、放送時間の異なる地域も)で演じる高槻功は“普通の人生”を歩み、定年を迎えたさえない男だ。同窓会で小学校時代の同級生と再会し、その平凡さを嘆く。脚本の岡田惠和からは「市村さんを本当にみすぼらしく見せたい」と言われたという。
ギャップを感じたが、振り返ってみると、昔から「背中に哀愁がある」と言われてきたという。「役を背負うと言うのかな。もの悲しい雰囲気は持っていたのかも」
自身はミュージカルの再演を通じて人生を振り返り、刺激を受けていると話す。12月には「屋根の上のヴァイオリン弾き」、来春には「ラ・カージュ・オ・フォール」の再演を控える。同じ役でも前回と今では体調や精神面で明らかな差があるといい、「役を見直すことで、自分に足りないものを探していきます」。
その作業は、今回のドラマにも通じる。「それぞれが生きがいを持ち、もし失っていたらそれを取り戻すことが大事。ドラマを見た人が、忘れちゃったものを呼び起こし、今後の人生につながったら」
今後、演じてみたい役は「ゴミくずのような、汚れた役」だという。役者は、与えられた役に苦しむことで成長すると考えるからだ。「市村を落とし込むような、あいつの精神がズタボロになるまで追い込んでやろう、っていう監督さんとやってみたいね」(文・野村杏実 写真・山本友来)