教育無償化をめぐる政府・与党の議論が迷走を重ねている。衆院選に向けて安倍晋三首相がトップダウンで打ち出した公約のため、制度設計や効果の検証が不十分で、選挙後に様々な課題が噴き出している。大枠は固めたものの、一部の論点の検討は年明けに先送りした。
最初の混乱は、認可外保育園の扱いをめぐって表面化した。
首相は選挙戦で、3~5歳のすべての子どもについて幼稚園・保育園の費用を無償にすると訴えた。ところが選挙後、政府内で認可外を対象外とする検討が進んでいることが報道されると、認可保育園に入れたくても入れられなかった保護者らが強く反発。首相も「認可外を無償化の対象外とする方針を決めた事実は全くない」と火消しに追われ、結局、認可外も幅広く対象に含めることになった。
すると、今度は認可外の保育料をいくらまで助成するかが問題に。当初は幼稚園に通う世帯との公平性を重視し、政府が定める幼稚園の公定価格と同じ月2万5700円を上限にする案を検討したが、認可保育園の保育料とのバランスをとるべきだという意見が強まった。結局、認可保育園の保育料の全国平均である月約3万5千円を上限とする案を軸に検討することになった。
首相の言う「すべて無償」の意味をめぐっては、自民党内でもいまだに認識の一致がみられない。
岸田文雄政調会長は22日、「『すべて』という言葉をどうとらえるか。対象も内容も含めて『すべて』なのか、対象が『すべて』なのか。まだ党の議論も続いている」と説明。党内からは、幼稚園で延長して子どもをみる「預かり保育」まで対象とすべきだとの声も上がる。24日に政府に提出した党提言は「無償化措置の対象範囲について、来年夏に向けて保育の必要性の観点から検討を進める」とし、結論を先送りした。
党内では、無償化よりもまず待機児童対策を優先すべきだとの声も噴出した。当初は2兆円パッケージの中では想定されていなかった保育士の待遇改善策が盛り込まれたのは、そのためだ。(中村靖三郎)
大学など高等教育の無償化にも…