記者に囲まれながら防衛省を出る稲田朋美防衛相=28日午前9時38分、東京都新宿区、金川雄策撮影
南スーダン国連平和維持活動に派遣された陸上自衛隊の部隊が作成した日報問題で、稲田朋美防衛相は28日午前の閣議後の記者会見で、引責辞任を表明した。
会見で、日報をめぐる監察について稲田氏は「今般の特別防衛監察で反省すべき結果が示された。極めて遺憾だ」と述べ、陸上自衛隊内で見つかった日報の電子データが不開示とされたのは、情報公開法の開示義務違反などにあたる、との考えを示した。そのうえで、事務方トップの黒江哲郎・防衛事務次官を停職、陸上自衛隊トップの岡部俊哉・陸上幕僚長を減給処分としたことを明らかにした。
午前10時47分、記者が詰めかけた防衛省の記者会見場に入った稲田氏は、紺色のスーツ姿。手元の紙に目を落とし、特別防衛監察の結果や防衛省幹部の処分内容をゆっくりと読み上げた。
稲田氏は、陸自で日報の電子データが見つかったことが自身に「報告」されていたとの報道について、特別防衛監察では「陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、非公表の了承を求める報告が(大臣に)なされた事実はなかった」と結論づけられたことを明らかにした。そのうえで、稲田氏は「私自身、報告を受けたという認識はいまでもない。そうした報告があれば、必ず『公表すべきだ』と言ったはずだ」と主張した。
そのうえで、稲田氏は自身の責任について、「私は防衛省・自衛隊を指揮監督する防衛大臣として、その責任を痛感しており、1カ月分の大臣給与を返納することとした」と述べ、「防衛大臣としての職を辞することとした。さきほど総理に辞表を提出をし、了承された」と語った。
稲田氏は、6月の東京都議選での応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言したことについて、「本来であれば自民党としてお願いすると言うところ、誤解を招きかねない発言だった」と釈明した。
稲田氏が顔を前に向けるたびにカメラのフラッシュが一斉にたかれる。昨年8月の内閣改造で防衛相に抜擢(ばってき)されたものの、日報問題や自身の発言をめぐり防衛相としての資質が問われ続けた稲田氏への注目の高さをあらためて印象づけた。辞任を表明したこの日の会見では、吹っ切れたかのように、記者の矢継ぎ早の質問によどみなく答えた。
陸自で日報の電子データが見つかったことが自身に報告されたかどうかという問題の解明について、「特別防衛監察を開始してから4カ月、徹底的な調査がなされた。私にも聴取が行われた。さまざまな資料、関係者の聞き取りなどで事実関係について解明ができたと考える」と述べた。
稲田氏は防衛相としての経験について「この1年間を振り返り、反省すべき点は多々あった。やるべきことをやって悔いはない。一議員として、これからも安倍政権の政策前進のため全力を挙げる」と述べた。
稲田氏は「最後にあらためて申し上げますが」と自ら切り出し、「私ども防衛省・自衛隊としては、国民の皆様との関係において、日報は自らすべて提出している。本件の日報について隠蔽(いんぺい)の事実はない。防衛省・自衛隊の名誉にかけて、このことだけは申し上げたい」と述べた。陸自で見つかった日報の電子データを「非公表」としたものの、統合幕僚監部で見つかった同じ日報のデータは「公表」したため、隠蔽(いんぺい)には当たらない、という見方を強調した。
午前11時33分、会見は終了した。