三宅泰雄さん
1954年の第五福竜丸事件をきっかけに、海域や大気の放射能汚染を調査し危険性を訴えた地球化学者の故・三宅泰雄さん(08~90年)が設立した「地球化学研究協会」が、来年3月末に45年の歴史に幕を閉じる。環境や公害など幅広い分野の研究者を支援し、市民向け講座も続けてきた。2日に最後の講座がある。
同協会は、東京教育大(現・筑波大)教授を務めた三宅さんが退官後の72年8月、地球化学分野の発展や普及を目的につくった。翌73年には、環境だけでなく、地学や海洋、宇宙など地球化学分野の研究で優れた研究者を毎年表彰する「三宅賞」を始めた。
「所属学会の垣根を越えて表彰する制度は当時まだ珍しかった」。受賞者の1人で、同協会の現理事長の東京大名誉教授の兼岡一郎さんは話す。女性科学者の先駆けで知られる故・猿橋勝子さんも受賞した。
これまでに三宅賞は44人に贈られ、市民向け講座は53回開かれたが、役員らの高齢化もあり、来年3月末で協会は解散することになった。三宅賞は「日本地球惑星科学連合」の学術賞として引き継がれるが、本の出版や講座などはすべて一区切りになる。兼岡さんは「賞の名前や価値は定着したし、講座を通じて地球化学の裾野を広げることもできたのでは」と語る。
最後の講座は東京都千代田区の霞が関ビルにある東海大学校友会館で、京都大名誉教授の和田英太郎さんが海洋生態学をテーマに講演する。無料。問い合わせは同協会(029・895・0488)へ。(戸田政考)