パソコンを持ち寄り、会議するトキワ荘のメンバーたち。中央が為末大さん=東京都渋谷区
「スポーツトキワ荘」。JR原宿駅(東京都渋谷区)近くのマンションにそう呼ばれる一室がある。元陸上選手の為末大さん(39)を中心に、集うのはスポーツベンチャー企業の若手経営者たち。競技や業種ごとに縦割りになりがちなこの業界で、人脈作りや資金調達の情報を共有する狙いだ。ここからスポーツベンチャー界の手塚治虫や赤塚不二夫は生まれるか。
競技用義足を開発する「Xiborg(サイボーグ)」、スポーツや音楽などエンタテインメント事業を手がける「Fanforward(ファンフォワード)」……。トキワ荘には現在9社のベンチャー企業が名を連ねる。
約10畳の部屋に6人ほどが集まれる長机が1つ。テレビ電話もできるこのスペースに、パソコンやタブレットを持ち寄った20~30代の経営者が集う。
「進捗はどう?」
メンバーはコーヒーを飲みながら気軽に意見を言い合い、困っていることを相談する。ときにそのまま近くの居酒屋に流れ、深夜まで語り合う。
「みんなが時間や空間を共有し、生まれるものに価値がある。ここを、スポーツビジネスの『ホットスポット』にしたいんです」と発起人の為末さんはいう。
トキワ荘構想のきっかけは2013年ごろ。スポーツに関わる事業を展開していた為末さんは行き詰まりを感じていた。選手時代の経験から自分が中心になって物事を進めていたが、うまくいかない。
「自分が仕切ったものはことごとく破綻していた」
そのころ、為末さんに連絡をとったのが現在スポーツ観戦用のアプリを手がける「ookami(オオカミ)」の経営者、尾形太陽さん(28)だった。
尾形さんは小学4年からクラブ…