明石市長の泉房穂さん。「障害があろうと小さな子どもがいようと当たり前に出かけられるやさしいまちをつくりたい」=兵庫県明石市、滝沢美穂子撮影
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子どもを核にした街づくりを進め、人口増、税収増を実現している自治体がある。人口約30万人の兵庫県明石市。さまざまな取り組みは全国から注目される。子どものための政策にはどんな考え方が必要か、他の施策とのバランスをどうするのか。2011年の市長就任以来、独自の視点で取り組む泉房穂さんに聞いた。
――なぜ、子どもを核とした街づくり、なのですか。
「子どもは『まちの未来』だからです。すべての子どもたちを市民みんなで本気で応援する、そんなまちこそが発展すると思っています。明石市は、神戸や大阪への交通の利便性が高く、家賃相場も周辺より安いベッドタウンです。市民のニーズは大学や企業の誘致より子育て支援の充実で、それに応えることが市の発展にもつながると考えました。そこで、中学生までの医療費、第2子以降の保育料、市営施設の子どもの利用料などをすべて所得制限なしで無料化したのです。応能負担である保育料が月に3万~4万円かかっていた世帯年収400万~600万円の共働きの中間層の負担を一気に軽減したのが特徴です」
――所得制限をつけないことに、批判はありませんか。
「所得制限は親を問うていることになります。子どもを親の持ち物のようにとらえ、親の所得によって子どもを勝ち組と負け組に二分するようなものです。子ども全員を対象に低所得者層だけでなく中間層の子や孫にも恩恵が及ぶようにした方が、納税者として市の財政の支え手にもなっている中間層に理解が得やすくなるのは明らかです。当初は所得制限すべきだとの声もありましたが、多くの市民が恩恵を受け、今はそうした声は聞こえません。以前は若者が進学や就職で外に出て、結婚後は阪神間で暮らすのが一般的でした。最近は子育て世代が明石に戻ってきている。帰ってこないと思っていた娘が戻り親も喜んでいます」
明石市長の泉房穂さん。「障害があろうと小さな子どもがいようと当たり前に出かけられるやさしいまちをつくりたい」=兵庫県明石市、滝沢美穂子撮影
――人口が増えていますね。
「4年連続で増加し、その間、約6千人増えました。今年だけでも周辺の神戸市は約2千人、加古川市や姫路市は1千人以上減っていますが、明石市は2200人以上の増です。30歳前後の中間層の夫婦が子連れで転入するのが典型で、2人目、3人目の出産につながり、出生数も回復しています。市税収入も、納税者数や住宅需要の増加などにより、5年前と比べて約30億円増える見込みです」
「子育て支援と待機児童対策は車の両輪」と語る泉市長。予算はどう調達しているのでしょう。政府の子ども政策についての考えや、やさしい社会への強い思いの原点は。
――急速な流入で認可保育所に…