ガザ地区で8日に起きた対米、対イスラエル抗議デモに参加し、イスラエル兵に射殺されたパレスチナ人のマフムード・マスリさんの写真(右奥)の前に座る父親のアベダルマジードさん(中央)と兄のファティさん(左)=10日、杉本康弘撮影
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トランプ米大統領が6日にエルサレムをイスラエルの首都と宣言して以降、イスラエルとパレスチナの暴力の応酬が止まらない。これまでにパレスチナ人4人が死亡し、同1600人超が負傷した。トランプ氏は宣言は和平につながると強調するが、パレスチナ側は米高官との会談を拒否。イスラエルとパレスチナの対立は決定的となり、中東和平はさらに遠のいた。
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「不当な決定、耐えられない」
10日午後、パレスチナ自治区ガザ地区の南部ハンユニス郊外。イスラエルとの境界付近で、パレスチナ人の若者ら数十人がタイヤを燃やして抗議し、境界フェンスの向こう側のイスラエル兵に石を投げつけていた。イスラエル兵士は催涙ガス弾を発射して応戦し、着弾した草むらからは白煙が上がった。
ガザ地区で10日、トランプ米大統領のエルサレム首都宣言にタイヤを燃やして抗議するパレスチナ人の若者たち=杉本康弘撮影
抗議行動に参加していた無職アフマド・バルバさん(24)は「私たちは米政府が首都宣言を撤回するまで抗議を続ける。イスラエル軍との戦闘は何度も経験しており、怖くない」。路上で米国旗やイスラエル国旗、トランプ氏の写真を燃やしていた高校生ムハンマド・アジーンさん(17)は「パレスチナ人からエルサレムを奪う不当な決定に怒りが収まらない。パレスチナ人は今こそ団結して立ち向かう」と語った。
ガザ地区で10日、トランプ米大統領のエルサレム首都宣言にタイヤを燃やして抗議するパレスチナ人の若者たち=杉本康弘撮影
ハンユニス中心部には白い仮設テントが建てられ、抗議行動で死亡した若者の遺影が飾られていた。
写っているのはマフムード・マスリさん(29)。8日、ガザ地区のイスラエル境界付近であった抗議行動に参加し、イスラエル兵に射殺された。トランプ米大統領による6日の首都宣言以降、パレスチナ各地やイスラム諸国に急拡大した抗議行動で初めての死者となった。
マフムードさんは7日、自身のフェイスブックに「我々の土地のために犠牲になる覚悟がある」と書き込んでいた。兄の自営業ファティさん(33)は「マフムードはイスラエルとの境界フェンスに、パレスチナの旗をかけただけで射殺された」と憤る。
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父の無職アベダルマジードさん(54)は自分自身に言い聞かせるようにつぶやいた。「トランプ氏の宣言は、すべてのパレスチナ人、イスラム教徒にとって耐えられない。息子の死はショックだが、神に与えられた運命と思うしかない」
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